さらに、「表現活動は、作品を作るというより、たったひとりの自分の世界を築くことだと思う。しかし、やまなみ工房で絵を描くことを強要しているのではない。障がい者を芸術家として社会に出しているのでもない。いかに豊かに生活できるようになるかを考えているだけ」と語る。
そして、「『障がい者だからすごいとか、障がい者なのにすごい』という、特別な見方をせず、お互いに対等な、尊厳を持った生き方ができればと思う。そうしたことから、障がい者に対する正しい理解につながるのでは」と力を込めた。


ウォンさんをよく知るアンジェラ・タン氏は、ART:DIS エグゼクティブディレクター。これまでのウォンさんのアーティスト生活を振り返り、「もともとはマーカーで描き、鮮やかな色彩美だったという。ある時、父親が体調を崩し、母親が看病をする際にマーカーを買いに行く時間がなくなり、自宅に何か絵の道具はないかと探していたところ、模造紙を見つけた。それを切り貼りしたのが始まりだった」と話す。
岡元さんは音楽を聴きながら、ウォンさんはセサミストリートのYouTube動画を観ながら作品を作るのが共通点。
アンジェラ氏は、「表現するという行為は、人間の根源的な欲求だ。純粋な気持ちを表すことが人生の一部になる」と訴えた。


※1 ART:DIS~1993年、シンガポールに設立された非営利団体。障がい者に対して、芸術を通じた学びと就業の機会を提供することを目的に活動している。
※2 UOL~シンガポールを拠点とする不動産会社(United Overseas Land Ltd.)。





