ここ数年、様々な手続きにおいて「押印」を必要としない場面が増えています。こうした状況を、はんこ製造メーカーはどう捉えているのでしょうか? 株式会社岡田商会(大阪府大阪市)の岡山耕二郎さんに話を聞きました。

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岡山さんは、現代のはんこ文化ついて“意味を変えること”が大事だと話します。「はんこだけでなく、どんなものも時代とともに役割を変えていくものだと思います。例えば、ろうそくは元々『明かりを得る手段』でしたが、電球が登場してからは『癒しのアイテム』に価値を変え、あらたな顧客を増やしています」とのこと。
岡山さんの考える、はんこの「新たな価値」とは何なのでしょうか。
「デジタル技術の発展が進み『個人を認証する手段』から『自己表現やコミュニケーションのためのツール』へと役割を変えていくと考えています。また、ハンドメイドなど趣味の分野でもはんこの価値はこれからも高まっていくと思います」(岡山さん)

最近ではアニメやゲームのキャラクターがデザインされたはんこが販売されており、「推し活グッズ」として購入する人も増えているのだとか。
さらに、訪日外国人の間でも日本のはんこ文化が人気を集めているそう。「記念スタンプなどが置かれているスポットではんこを押し、その様子を動画で撮影してYouTubeやTikTokで『#JapanStamp』などのハッシュタグを付けて投稿されている方も多く、はんこ人気の高まりを感じます」と岡山さん。

岡山さんの会社でも北米や韓国に向けたはんこの販売を開始したそうですが、やはり難しさを感じる場面も多いとのこと。
「北米では“スタンプ”という存在はあるものの、基本サイン文化なので『はんことは何か』を伝えることから始めないといけない。生活習慣の中でなじみがないものを理解してもらう難しさを感じています。その一方で、『自分だけのスタンプをデザインするのがとてもクール』や『スタンプは完璧なギフトだ』といった声もあり、コツコツとはんこの魅力を伝えていけたらと思っています」(岡山さん)
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デジタル化によって存在意義が問われるはんこ。ですが、いまの時代ならではの「活路」を見出し、これまでとは違った広がりを見せています。
(取材・文=迫田ヒロミ)
※ラジオ関西『Clip』2025年9月3日放送回より




