劇作家・平田オリザと作曲家・中堀海都が手がける新たな芸術体験 『豊岡演劇祭2025』で12日から | ラジトピ ラジオ関西トピックス

劇作家・平田オリザと作曲家・中堀海都が手がける新たな芸術体験 『豊岡演劇祭2025』で12日から

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 平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、ニューヨークを拠点に活動する作曲家・中堀海都(なかほり・かいと)さんが出演。『豊岡演劇祭2025』で上演されるシアターオペラ『その星には音がない―時計仕掛けの宇宙-』の見どころについて、共同制作者でもある平田さんとともに語った。

作曲家・中堀海都さん(写真中央)、番組パーソナリティーの平田オリザ(同左)、田名部真理(同右)

 世界が注目する、若き作曲家・中堀海都さん。武満徹(たけみつ・とおる)の音楽と雅楽の影響を受けたという中堀さんの音楽は、従来の音楽の概念を根本から覆す革新的な表現を追求している。

 中堀さんが実践する音楽は、「タイムレスミュージック」と「スペースタイムミュージック」という独自の概念に基づいている。音と沈黙が織りなす時間、音響の変化や空間的な移動を重視する彼の作品は、聴く者にまったく新しい音楽体験を提供している。

 2015年に国際連合本部で開催された古典演奏会以降、その活動は多岐にわたり、オペラから雅楽まで、さまざまな編成の作品を世界各地で発表。今年1月には、マンハッタンにある美術ギャラリーで電子音楽のパフォーマンス、春には水戸国際音楽祭のディレクターに就任した。

 今月は、オーストリアの音楽祭で雅楽と日本酒を組み合わせたサウンドインスタレーションを展示するなど、演劇や美術とのコラボレーションも積極的に行っている。

 中堀さんと平田さんの出会いは、2019年の冬にさかのぼる。東京文化会館で開催されたコンサートがきっかけだった。中堀さんは、このように振り返った。

「私の師匠でもある作曲家・細川俊夫さんと僕、それから、ハンガリーの作曲家とその弟子という4人の作曲家が並ぶコンサートで、平田さんがコンサート全体の演出をされていたんです。以前から、細川さんと平田さんがオペラで共同製作されているのを知っていたのでオペラへの興味を伝えたところ、『じゃあやってみましょう』ということで、2020年の豊岡演劇祭で小規模な共同作品『零』をつくりました」(中堀さん)

©︎igaki photo studio
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 9月12日(金)より、『豊岡演劇祭2025』で上演される演目『シアターオペラ その星には音がない―時計仕掛けの宇宙-』は、両氏が再びタッグを組み、本格オペラに発展させた意欲作だ。

 作品の最大の特徴は、立体音響技術の革新的な使用。楽譜は二段構成となっており、上段はパフォーマンス、下段は事前に録音された音を同時に展開する。20〜30台のスピーカーを配置し、音や声が空間内を移動するという、まるで宇宙空間を体験するかのような音響効果を生み出す。

 また、“意味を持たない言葉の断片や子音を拡張させた独自の表現”を用いる「ヴォカリーズ(声のみを使う歌唱法)」も、この作品の特徴的な要素だ。通常のオペラとはまったく異なる、言語の新しい可能性を追求している。

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