美と気品、華やぎ、温かさ、生命力も。20世紀に活躍した女性画家の優品を集めた展覧会「女性画家たち展」が山王美術館(大阪市中央区)で開かれている。美術界で女性が認められることが難しかった時代、生涯をかけて自らの画業を成し遂げた上村松園、片岡球子、三岸節子、マリー・ローランサンの4人にスポットを当てた企画。2026年1月31日(土)まで。
今年は国連が定めた「国際女性デー」制定から50年に当たる。展示を担当した同館の大町啓介学芸員は「担当が男性の自分で良いのかと悩んだ気持ちも正直あった。展覧会を通じて自分の中にある、男女の役割についての無意識の偏見に少し気付くことができた」と語る。


京都生まれの上村松園(1875~1949年)は京都府画学校に学び、15歳の時、内国勧業博覧会への出品作が賞を受け、英国王子が作品を買い上げた。文展や帝展でも活躍、謡曲に取材した格調高い女性像やさまざまな市井の女性など、気品あふれる美人画を数多く制作。1948年、女性初の文化勲章を授章した。
今展では、膝の上に本を広げて読書する若い女性を描いた「美人観書」(1941年ごろ)を初展示。桜の柄が入った着物、胡蝶模様の帯が春の華やぎを、うっすらと微笑を浮かべながら袖口で口元を押さえたしぐさが、本の世界に浸る女性の高揚感を伝える。ほかに「美人納涼図」(1916~1926年頃)、「よそおひ」(1949年)も公開。

大胆な構図と鮮烈な色彩で知られる片岡球子(1905~2008年)作品は、同館が持つ23点が一堂に会する。103歳まで生きた片岡は、その後半生で富士山を描くことをライフワークとした。今展でも「菊と富士」(1970年)、「ゆきの富士」(制作年不詳)、「そてつと富士」(同)、「花咲く富士」(1985年)など、多彩な富士作品が登場。「前かけのポケットなんかに突っ込んでおいて、いつでも取り出して眺められるような、そんな親しみのある富士山を描きたいと思っているんです」という本人の言葉通り、片岡の富士山は、私たち1人1人の心に寄り添うような温かさと生命力に満ちている。
片岡のもう1つのライフワークは「面構(つらがまえ)」シリーズ。歴史上の人物が現代に生きていたらどのように活躍したかを想像、綿密に取材を重ね、独自の解釈を加えて描いた人物画で、生涯において44点を描いた。今展では、写楽をモデルにした「面構十三人衆内 写楽」を初公開。充血したように赤みを帯びたつり上がった目、何かを言いたげな口元。洒脱な着物に身を包んだ写楽とおぼしき男性の背景は真っ赤に塗られている。画面全体からエネルギーが立ち上り、謎の浮世絵師の実像に迫ったという片岡の自信が見て取れる。





