生まれも育ちも神戸市中央区でサブカル郷土史家の佐々木孝昌(神戸史談会、神戸史学会・会員)が、北区出身で落語家の桂天吾と、神戸のあれこれについてポッドキャストで語る『神戸放談』(ラジオ関西Podcast)連載シリーズ。今回のテーマは「兵庫・神戸のメディア」です。
今回で第1シーズン終了となる『神戸放談』。最終章は、プロデューサーからの指令で兵庫・神戸のメディアを遠慮や忖度なしに語れと。落語家の桂天吾君も僕も、ラジオ以外でも仕事しとるのに失職したらどうしてくれんねん……。なかなか話しにくいテーマだが、メディア論などではなく思うがまま、まさに“放談”をば。
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神戸の主な地元メディアといえば、「神戸新聞」「サンテレビ」「ラジオ関西」「Kiss FM KOBE」だろう。これらは、神戸市内はもとより兵庫県内での存在感はどうなのか? 新聞では全国5紙があり、テレビは在阪5局とNHK、ラジオは在阪6局(コミュニティは除く)とNHKがある。圧倒的に、そちらの方が読まれ観られ聴かれているのは否めないだろう。天吾君は朝日新聞、僕は神戸新聞で連載をしているが、近年は新聞を購読している家庭も減少傾向。だが、朝刊は1部140円~200円と新聞社によって異なるものの、あの情報量でこの値段は破格である。天吾君は連載もあるので朝日新聞を購読。実家は、毎日新聞を購読していたが今は購読していないという。天吾家は新聞離れしているではないか……。
【神戸新聞】
わが家は、昔から神戸新聞一筋である。やはり、地元の話題に強いというのが大きい。ネットの神戸新聞NEXTも併せて、地方紙としては頑張っていると思う。だが、以前に比べて地域の話題が少々弱くなっているように思う。あと、僕の連載のような地域文化・歴史系の連載も少なくなっているのでは。仕事柄、地域の話題や連載の切り抜きを長年しているが、個人的に、その切り抜きも近年は少し減っている。とはいうものの、「連載読んどるで」という声もいただくので、地方紙として、よりディープなローカルの話題を伝えてもらいたい。

【サンテレビ】
天吾君がレギュラー出演をしている(僕は仕事をしたことはない)。同局といえば阪神戦だが、僕は野球を観ないので観ることがめっきりなくなってしまった。かつては昼に放送されていた古くて結構マニアックな洋画や、アメリカの古いテレビドラマの再放送をエアチェックしていたし、洋楽好きだったので『POPベティハウス』や『アニメ・ザ・ビートルズ』、バラエティは『ヤンヤン歌うスタジオ』、そして夜は……今ではコンプライアンス的に放送できない『おとなのえほん』などを観ていた。Sweet Peopleの楽曲がBGMに流れ、今観るとチープなCGの放送終了クロージングも忘れ難い。
そういったニッチなプログラムが減ってしまったのでは。天吾君は「いやいや、『生×カラ!TV』が濃いですよ」と言う。たまたま観たことがあるが、確かにディープなカラオケ番組だ。サンテレビにはもっとニッチに走って欲しいところ。

【Kiss FM KOBE】
何度か仕事をしたことがある程度。天吾君の持つ同局のイメージは、ターザン山下さん・クマガイタツロウさん・藤原岬さん。天吾くんは、とくに藤原岬さんと共演したいのだとか。彼はリスナー、いや「キスナー」なのである。が、Kissという愛称がどうも小恥ずかしさがあるそうだ。まぁ、日本語で言うたら接吻やからな。
それはともかく、開局当初はオシャレ神戸感が強かったイメージがある。当時、僕は小曽根真さんの『OZMIC NOTES』などを聴いていた。以前は、神戸市街のちょっとこじゃれた飲食店やお店でBGM的に流れていた印象がある。近年、AMラジオがワイドFMの放送も始めたのでAM とFMの垣根も無くなりつつある。いわばラジオ関西のライバル局でもあるので、より独自色と神戸色が必要かもしれない。

【ラジオ関西】
この『神戸放談』はもとより同局で番組ディレクターをして26年目なので、ネタは山ほどあるがここは手短に。radikoやワイドFM以前は、Kiss FM KOBEは神戸の市街地、ラジオ関西は播磨、但馬地域でよく聴かれていた印象がある。以前はラジオカー中継や公開生放送などもよくあったが、近年はめっきり少なくなった反面、Podcastのコンテンツやラジトピに力を入れるように。2024年の春には、若いリスナーとネットメディアを視野に入れた思い切った改編に舵を切った。これがどう出るかは未知数だが、ある意味、既成概念にとらわれず斬新ではある。ただ、昼の生ワイドからベテランのラジオパーソナリティーが姿を消し、地域密着のローカルな話題も少なくなり、自社制作番組も減少した。
僕はラジオ関西で仕事をするまで、ほとんど同局は聴いたことが無かった。大学生だった阪神淡路大震災の時も、つけたラジオはNHKだった。だが、聴いたことは無くても地域密着型のパーソナリティーでもある谷五郎さんの名前は知っていた。局舎が神戸ハーバーランドに移転して30年目になるが、取材などに行くと未だに「須磨にあるんやろ?」と言われることが多々ある。それだけイメージがこびりつくほど、過去は地域密着だったわけである。
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神戸の地元“オールド”メディアが存在感を出すには、やはり全国及び在阪メディアには無いニッチなコンテンツや地域に密着した情報や話題に力を入れるしかないのかもしれない。そういった意味では、やっぱり『神戸放談』やね……?
(文=サブカル郷土史家 佐々木孝昌)
※ラジオ関西Podcast『神戸放談』#26「兵庫のメディアは見聞きされているのか?」より




