香港のダンスカンパニー「Unlock Dancing Plaza」との国際共同制作も、この作品の大きな特徴だ。2016年に海外のダンスフェスティバルで出会って以来、すでに3つの大作を共同制作してきた。今回の作品も、両カンパニーの独自の創作手法が交差し独創的な作品を生み出した。
創作過程で特に注目されたのは、参加者自身の動きを大切にする手法だ。振りつけを単純に教えるのではなく、参加者から生まれる動きを作品の核とした。最初は10秒だった振りつけが、参加者の創造性によって徐々に変化し、豊かな表現へと発展していった。

地域との深いつながりも、この作品の大きな特徴。養父市内外から集まった参加者たちは、単なる出演者を超えて作品創造の共同作業者に。衣装として使用したユニフォームも、地域の協力によって集められた。参加者の思い出の品や地域の方々から寄せられたユニフォームが、作品に深い意味と重層性を与えた。当日は、“ダンス観戦”といわんばかりの横断幕などが会場に掲げられた。
今後の活動としては、2023年から始めた宮崎での国際ダンスフェスティバルの継続と、新作の発展に意欲をみせている。『竹を切る人の物語』と題した新作は、竹取物語をモチーフにしたコンテンポラリーダンス作品で、すでに大分アートフェスティバルでの上演が決定している。
宮崎の拠点施設も独創的。日中は保育園の体育館として、夜間と週末は劇場に変身する多機能空間「透明体育館きらきら」と「国際こども・せいねん劇場みやざき」として。芸術と日常の境界を曖昧にする革新的な試みだ。
番組では、平田さんが「必要であれば、豊岡演劇祭で同世代の方々と舞台に立つのもやぶさかでない。けれど、後輩の結婚式でちょっと踊るだけでもぜんぜん覚えられなかったから大丈夫かな(笑)」と参加に意欲をみせる場面もあった。
「んまつーポス」の活動は、誰もが思わず体を動かしたくなるという、芸術表現を超えた教育・地域コミュニケーション・世代間交流の手段として捉えることができる。これらの挑戦は、従来の枠組みを超えて身体表現の可能性を広げ、新しい芸術と社会の関係性を提示しているといえるのではないだろうか。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2025年10月9日放送回より
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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 12:30~12:54
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp
『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。





