兵庫県宝塚市の住宅で年2020年6月、同居する親族らにボーガン(クロスボウ・洋弓銃)を撃ち3人を殺害、1人に重傷を負わせたとして、殺人などの罪に問われた無職の男(28)の裁判員裁判が15日、神戸地裁で開かれ、検察側は死刑を求刑した。

争点は男の責任能力と量刑。
検察側は初公判で、
▼男が従来、人とのコミュニケーションが極端に苦手な『自閉スペクトラム症』と強い不安や恐怖心を持つ『強迫性障害』があった
▼母親がうつ病を発症し、家庭での役割を果たさないことなどから不信感を抱いていた
▼精神的に安定していた時期もあったが、大学在学時に将来への展望を持てず、自殺を考えるようになった点を明かした。

男は被告人質問で、「事件を起こしたことに後悔はないのか」と問われ、「ありません」と答えた。また「死刑になりたい気持ちは、当時と変わらず持ち続けている」という趣旨の発言を繰り返した。
検察側は論告で、「被告は従来、人とのコミュニケーションが極端に苦手な『自閉スペクトラム症』があったが、これが動機につながった影響は大きくなく、事前にボーガンを準備し、試し撃ちをして威力を確かめるなど計画性があった」とした。
さらに、「犯行を何度もためらうなど、行動を制御する能力を持ち備えており、責任能力があった」とした。
そして、「殺害手段や方法の執拗性、残虐性は類を見ない」と厳しく指摘した。
そのうえで、幼少期から男の家庭環境が複雑で、不遇な部分があったことは否定できないが、「死刑になりたい」「死刑判決を確実にするための犯行」という自己中心的な動機は、人命軽視も甚だしいと述べた。
一方弁護側は「男は犯行当時、物事の善悪の判断能力が著しく減退している心神耗弱(しんしんこうじゃく)状態だった」と述べ、「責任能力は完全に備わっていなかった」と主張、有期刑の懲役25年が妥当だとして結審した。判決は10月31日。
起訴状によると、男は2020年6月4日午前5時ごろから10時10分ごろまでの間に自宅で、祖母(当時75)、母親(同47)、弟(同22)の頭部にボーガンの矢を放って殺害し、伯母(現在55)に対しても、首の骨を折るなどの傷害を負わせたとされる。

