金融機関・但馬信用金庫の演劇部が描く「地域貢献の新たな形」 営業終了後の店舗での上演で話題に | ラジトピ ラジオ関西トピックス

金融機関・但馬信用金庫の演劇部が描く「地域貢献の新たな形」 営業終了後の店舗での上演で話題に

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 創部後、ほどなくして『豊岡演劇祭』のフリンジ(公募)プログラム募集がはじまった。採用されれば、5か月後には本番を迎えることになる。 週1回、定時後の練習だけで果たして間に合うのか……。

 各々が持つリソースを最大限に活用した結果、導き出された答えは、「信用金庫を舞台に、実際の信用金庫窓口で信用金庫職員が『信用』をテーマに演じる」という前代未聞の提案だった。

 脚本と制作は、但馬地域に就職した同大学卒業生にそれぞれ依頼。以前より交流があった、元芸人で地域おこし協力隊の松原潤さんにもプロジェクトへの協力を仰いだ。

 めでたくフリンジに採択されると、チケットは早々に完売。国内外のアーティストも観劇に訪れるほどの話題作となり、プレッシャーで眠れない夜もあったという。俳優兼アドバイザー的な役割を果たした松原さんは、こう振り返る。

「私は昨年6月に関東から豊岡へ移住し、市役所とともに、デジタルを用いてまちの困りごとを解決する活動を進めていました。但馬信用金庫さんとはそこで接点があったんですが、まさか、俳優の依頼とは(笑)。しかも、すべてのポイントにいらっしゃるスタッフさんが全員演劇初心者で、大丈夫かなと。営業終了後とはいえ、セキュリティ面などの課題も山積み。相当大変だったと思うんですけれど、小山さんをはじめ、皆さんの真摯な対応と熱意でやりきれました」(松原さん)

稽古の様子

 猛稽古の末、『豊岡演劇祭2025』が開幕。信用金庫の実際の支店を舞台に、ロビーを客席に仕立て、職員たちもエキストラとして参加するという他に類を見ない演劇は、初心者とは思えない堂々とした演技で多くの観客を魅了した。

会場には多くの観客が集まった
公演の様子

 当初は懐疑的だった職員らも、公演後は大きく変化。「演劇のおもしろさを知りたい」「協力したい」という声が次々とあがったそうだ。

 公演後、小山さんのもとには77件ものメールが寄せられ、そのうち、数名からのメッセージには「信用金庫がより身近に感じられた」という声があったという。

 たんしん演劇部は今後も、CATとの連携強化を図るなど、地域の若者を巻き込みながら継続する予定だ。

 松原さんは、演劇の特性として「“演技はできないけれど絵は描ける”といったように、誰もが資質をいかしやすい」点を挙げている。これは、演劇を通じて地域の観光資源や文化的魅力を発信することで、金融機関という枠を超えた新しいコミュニティ創造の可能性を示している。

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