子どもたちのあこがれの職業の1つ、博物館学芸員の多岐にわたる仕事にスポットをあてた特別展「学芸員のおしごと―集める・調べる・伝える―」が大阪市立自然史博物館(大阪市東住吉区)で開かれている。博物館を支える学芸員たちが、どのように標本を作り、研究し、その成果を発信しているか、学芸員の研究内容も紹介する興味深い企画だ。2026年2月1日(日)まで。

「標本」を主軸に学芸員の仕事を「集める」「守る」「調べる」「伝える」などに分けてひもとく。「集める」では、昆虫や植物、魚、哺乳類、化石、岩石など、多種多様な標本がいかに採集・作製・保存されているかを解説。チョウの乾燥標本やイカの液浸標本、和泉層群のアンモナイト化石などさまざまな標本や、収集のためのユニークな道具類も並ぶ。新しく収蔵された標本のエリアでは、専門家やアマチュア研究者の手による膨大なコレクションや、2021年、大阪湾に漂着したニタリクジラの巨大な頭骨、2024年に死んだマッコウクジラの歯なども公開。クジラはいずれ大阪市立自然史博物館の担当者らによるチームが数年がかりで標本化したものだ。




見どころは、ふだん博物館関係者しか立ち入ることができない収蔵庫を再現したコーナー。引き出しや標本が所狭しと並ぶ中、小ぶりな作業台が置かれた庫内の様子を見ることができ、収蔵庫前にある靴の裏をきれいにする粘着マットを実際に踏む体験もできる。スペース・人員不足など標本管理の問題点のほか、標本を食べてしまう虫についての特集もあり、日頃の学芸員たちの苦労と努力が垣間見える。


展示後半は、博物館の普及活動がテーマ。触ることで形状を認識できる、視覚障害者向けの模型は、化石や地形を3Dプリンタを用いて精緻に再現したもので、目が不自由な人も博物館を楽しめる、希望に満ちた取り組みだ。そのほか各学芸員の研究内容や1日のタイムスケジュール紹介、一般の人が気軽に参加できる多彩な調査やボランティア、被災した博物館へのレスキューなど、学芸員や博物館の活動について網羅的に知ることができる。また同博物館では、来館者が気軽に質問できるようにと、15人の学芸員が毎日交代で窓口に座っており、一般の人に広く門戸を開いている博物館全体の姿勢が伝わってくる。






