近年世界中から注目を集めている和食ですが、味の決め手と言っても過言ではないのがダシ。そのダシをとるのに無くてはならないのが「昆布」です。ほかにも佃煮・昆布豆・酢昆布など、さまざまな食品に使われていますが「ヨーグルトに合わせる」というインパクト強めな提案をする企業があると聞きつけた筆者。さっそく調べてみました。
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昆布とヨーグルト、この一見突拍子もない提案を掲げるのが、1924年(大正13年)創業の日高食品工業株式会社。兵庫県姫路市で、とろろ昆布を中心に乾物製造を手がける老舗です。2024年に創業100周年を迎えた同社ですが、「いま昆布業界は厳しい状況にある」と代表取締役の河﨑廣信さんは明かします。その理由のひとつが「若年層の昆布離れ」なのだとか。例えば同社の主力でもあるとろろ昆布は、従来うどんや汁物のトッピングとして親しまれてきました。ですが時代とともに日本人の食生活や味の好みが変化し、特に若者がとろろ昆布に触れる機会は激減しているとのこと。
そこで同社は「うどんからヨーグルトへ」というスローガンを打ち出し、地元大学と連携。昆布を使った新メニューやレシピ開発を進めているそうです。学食での試食やアンケートも予定されており、学生の自由な発想をいかした提案を目指しているとか。専務取締役の八木義光さんは、「ヨーグルトにとろろ昆布を入れたものときざみ昆布を入れたもの、どちらが美味しいか試したこともあり盛り上がりました」とほほえましいエピソードを披露。
この話を聞いた筆者はふつふつと湧く興味を抑えられず、実際に食してみることに。用意したのはもちろん「とろろ」と「きざみ」の2種類です。

まずは「とろろ昆布バージョン」から試食。おそるおそる口に運んでみると……意外と合う! ヨーグルトの酸味を昆布のうまみが包み込むように調和します。昆布の塩味がそこまで主張することもなく、まろやかな味わいでした。「きざみ昆布バージョン」はシャキシャキとした食感が楽しめます。噛めば噛むほど昆布の塩味やうまみを感じるので、昆布自体の味わいはこちらの方が強く感じました。
ヨーグルトに対しては“デザート”という先入観があった筆者。最初に聞いた時は驚きましたが、よく考えてみるとドレッシングや料理の下ごしらえなどにも使われることは多く、もともと塩との相性もいい。ゆえに昆布と合うのは当然の結果かもしれません。料理に応用すればレシピの幅が広がりそうです。「昆布は主役にならずとも、料理を支える縁の下の力持ち。だからこそ、どんな食材とも合うんです」と八木さんも話していました。

ほかにも「刻み昆布ときゅうりの和え物」「アイスクリームのトッピング」など、意外な組み合わせが学生たちに好評だったのだとか。また、豆腐・納豆・キムチなど、身近な食品とのマリアージュもおすすめだそう。
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同社のように「昔からあるもの」の魅力を次世代へつなぐため、精力的に取り組む企業は各地に存在します。独自に調べてみるとおもしろい発見があるかもしれません。

(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「谷五郎の笑って暮らそう」2025年10月26日放送分より




