飼育放棄や飼い主の死などで行き場を失った犬や猫が新しい家族とともに暮らす姿を紹介する写真展「命を救ってくれて、ありがとう」(NPO法人C.O.N主催)が、このほど兵庫県尼崎市のつかしんギャラリーで開催された。会場には、保護された犬や猫のさまざまな表情や日常のワンシーンを撮影した写真とエピソードが並び、訪れた人々は興味深い様子で1つ1つの展示を観賞していた。

写真展は、C.O.Nが長年取り組んできた保護活動と、近年立ち上げた「高齢者とペットの安心プロジェクト」の周知、動物の命をつなぐことの大切さを伝えたいとの思いから企画された。展示は新しい家族に迎え入れられた保護犬・猫の写真48点で構成。それぞれの写真に添えられた飼い主からのメッセージを通じて、保護から譲渡に至る過程や、その後の生活の様子もつづられた。

また、高齢の飼い主と高齢ペットが互いに支え合いながら築いた絆を伝える「高齢者とペットの今をみつめて」コーナーも。高齢者の死亡などにより、保護された犬猫、とりわけ高齢の犬猫が、65歳以上の新たな飼い主のもとで、幸せに暮らしている3事例を12点の写真で紹介。人間と犬猫それぞれが高齢になった場合、どのような関わり方が理想であるのか、考えさせられる展示となった。

C.O.Nによると、自治体の動物愛護センターの収容能力は限定的で、尼崎市では犬6頭、猫30匹程度。民間団体やボランティアへの引き取り依頼が増える中、保護側の負担が大きくなっている実情があるという。また、全国的にボランティアの多頭飼育崩壊が発生するなど、現場は逼迫(ひっぱく)していて、社会全体で支える仕組みづくりが急がれている。
その対策の一環としてC.O.Nは、11月から阪神間の動物保護団体と連携、保護猫活動支援や民間保護シェルター開設を目指す「命を救ってくれて、ありがとう基金」を設立。写真展は基金の趣旨や、保護活動への理解と協力を呼びかける意図も兼ねている。

一方で推進する「高齢者とペットの安心プロジェクト」は、▽相談窓口の設置▽見守り支援サポーターによる訪問支援▽緊急時に備えた「高齢者とペットの安心カード」や「もしもに備えるチェックシート」の配布▽預かりボランティアの育成―の4本柱。安心カードは冷蔵庫に貼れるマグネット形式で、緊急時の連絡先を書き留めておくことができ、10月時点で尼崎市を中心に約4000枚を配布。今回の会場には、プロジェクト関連の相談窓口も設けられた。




