連日報道される全国各地の「クマ被害」。しかしながら、こうした野生動物とヒトとの間に勃発する問題は今に始まったことではありません。それぞれがすこやかに生きるためにどのように向き合うべきなのでしょうか? 兵庫県宍粟市の洋飾店「Sagua」の土井景子さんに話を聞きました。
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土井さんによると、宍粟市ではクマだけでなくシカ・イノシシ・サルによる農作物の被害が多いのだとか。収穫間近の農産物をはじめ植林した苗木の新芽、なんと民家に侵入し家庭菜園や花壇の植物まで荒らすといいます。中でもシカによる被害は深刻で、同市は頭を抱えているとのこと。

「シカと車による交通事故も多く発生しています。繁殖期などに関わらず、『夜9時を過ぎたらシカに気を付けて』と注意喚起がなされるほど。群れで行動し道路脇から飛び出てきたり、車と鉢合わせても逃げずに道路でじっとしている。大きな個体と接触すると廃車になるケースも」(土井さん)

同市の猟師が捕獲した野生鹿の原皮を地域資源として、鞄や財布・ポーチ・アクセサリーなどの小物を制作している土井さん。鹿革を扱うようになってから、幼少期に感じた「何も悪さはしていないのに可哀そう」という気持ちを思い出したと話します。
「ヒトも野生の野生動物も、生きるために行動しているのは同じ。しかしながら、人間の影響で野生動物の行動範囲を変えてしまっているのかもしれないと思っています」と土井さん。その理由として、戦後の復興開発のための山の掘削、温暖化による野生動物の冬眠・繁殖行動の変化、心無いレジャー客による山中へのゴミの遺棄を挙げました。

最後に、野生動物とうまく共生するためにはどうすればいいか土井さんの考えを聞いてみました。
「食べ物を粗末にせず、大根の葉も捨てずに食べていた時代……人間は山を大事にし、特に山奥には神が宿るとされ『入るべからず』と言い伝えられてきました。そうした山への畏敬が薄れきている今こそ、ヒトは自然をよく知り向き合うべきなのかもしれないと思います」(土井さん)

(取材文=迫田ヒロミ)
※ラジオ関西『Clip』2025年11月26日放送回より





