「ヒトは9割が右利き」「格闘技は左利きが有利」なぜ? “利き手”に関するアレコレを医学博士が解説

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 人間の利き手は“右”が大多数を占めるそうで、その割合は実に90パーセントだとか。ドアやネジ・改札など日常で使うモノは右利き仕様が多く、「世の中の作り自体」が右利きに合わされています。ヒトの利き手について、『すごい左利き』の著者で脳の学校代表の加藤俊徳医学博士に聞きました。

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●利き手は生まれたときに決まっている?

 加藤さんによると「遺伝性として決まっている部分もあるが、手の使い方は後天的なものに影響される」のだとか。ヒトは発達の過程からすると、2歳位までは無意識に右左の手を使っているのだそう。たしかに、その年齢の赤ちゃん達を見ると哺乳瓶を持ったりおもちゃを掴むのは両手もしくは右左交互であることが多いように思います。とはいえ、生後5~6か月で「右利き優位」の子も。これは右脳よりも左脳の方が発達し始めていることを示しているそうです。

●なぜ右利きが多いの?

 これについては諸説あるそうですが、加藤さんは2つの説を挙げました。ひとつめが「左脳の使用頻度の高さ」という説。生活していく上で必要な言葉や計算。それを操る時に使うのが左脳であり、右の半身を動かす部分でもあるのです。もうひとつが「心臓の位置に関係する」という説。通常、ヒトの心臓は身体の中心よりやや左にあります。その心臓を守るため右側を呈する(右側を使う)から……との事。

●左利きは不利なのか?

 ヒトの9割が右利きならば、残り1割のほとんどは左利きということになります。前述したように世の中は右利きに合わせた仕様がほとんどですから「何かと不都合があるのでは?」と思ってしましまいます。ですが、スポーツの世界では少し事情が違うようです。

〈格闘技〉「明らかに左利きが優位優勢」だと言う学術論文があるそう。というのも左利きの選手は珍しく、サウスポーとの対戦に慣れていない選手も多いとか。

〈バレーボール〉右利きの選手のアタックには目が慣れていますが、左利きの選手がアタックした場合、右で打つものとはボールの軌道が逆に。どこに落ちるのか予想がつきにくいというメリットがあるようです。

●左利きは「天才」が多い?

 これについては「あながち間違いでもない」と加藤さん。例えば、右利きが字を書くとき、左脳だけを使います。言葉と動作は左脳のみで処理されるため、脳内の情報伝達はスムーズと言えます。しかし左利きの場合は、右脳で左手を動かし左脳で言語を操るので、右脳と左脳を同時に使うことになり情報伝達が複雑になります。したがって、右利き・左利きのそれぞれに同じ課題が与えられたとしても脳内でのプロセスは全く違うのです。

 例えば“ドアを開ける”という単純な行為も、左利きは「利き手を使うのか」「あえて右手を使うのか」などということを無意識のうちに考えているのだとか。こうしたことは不便でありつながらも脳のトレーニングになっており、それが常態化しているのだそう。

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 ちなみに、右利きの人が物事を早く覚えるための手段として「あえて左手を使う」ということを加藤さんは教えてくれました。そうすることで、普段あまり使用していない右脳を動かすことになり集中力が高まる……といった効果もあるのだとか。試しに実践してみるといいかもしれませんね。

(取材・文=堀田将生)

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