20世紀の革新的な芸術運動「シュルレアリスム」(超現実主義)を特集した展覧会「拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が大阪中之島美術館(大阪市北区)で開かれている。オブジェや絵画に始まり写真、広告、ファッション、インテリアまで、多彩な優品を通して同運動がいかに文化、そして社会全体へと拡大していったかを分かりやすくひもとく。

シュルレアリスムは、およそ100年前、フランスの詩人アンドレ・ブルトンが定義づけたもので、無意識や夢に着目した心理学者フロイトの精神分析学に影響を受けて発生。「高次のリアリティと夢の全能性に基づいた、あらゆる創造行為」を指すとされる。

本展は、展示品がすべて国内の所蔵である点が特徴。菅谷富夫館長は、作品はおおむね1980~90年代に収集されたと推測、「なぜ日本でこんなにたくさん集めることができたのか。それは抽象的な作品よりもシュルレアリスム作品の方が具体的なものが描かれていて、集めやすかったからでは」とみる。「購入した当時は、本当の意味での作品の力を“見くびって”いて、モノや人、社会の見方をひっくり返すような力を持った作品を『うっかり入れてしまった』感じでは」と、作品が集まった背景について語る。
展示は全6章。第1章「オブジェ」では、フランシス・ピカビアの「黄あげは」(1926年)、サルバドール・ダリの「回顧的女性胸像」(1933/1977年)などを展示している。「黄あげは」は、人物の顔、仮面などを着けた裸体の男女像、アゲハチョウなどの水彩画に加え、本物のチョウの標本も入れた箱。「回顧的―」は、貴婦人のような表情ながら頭上に長いパンとインク壺、ミレーの「晩鐘」を再現したオブジェを乗せた異形で、よく見ると肩に下ろした髪はトウモロコシ、顔には無数のアリがはう。どの角度から見ても強烈なインパクトだ。


第2章「絵画」の見どころは、“2人の山高帽の男”。山高帽の男の背中にボッティチェリ「春」に登場する女神フローラが重なる、ルネ・マグリットの「レディ・メイドの花束」(1957年)と、同じくマグリットの「王様の美術館」(1966年)が隣同士で並ぶ。「王様の―」の山高帽の男は、体の輪郭と顔のパーツだけが残り、体の部分には緑豊かな丘の風景が広がる。「レディ・メイド―」で背を向けていた男が振り返ったら、シルエットと目鼻口だけだった―そんなイメージがふくらむ展示になっている。






