釜を温めるための燃料は、ガスや石油を一切使用しない”薪のみ”。この伝統製法が沖ヶ浜田の黒糖の『美味しさ』の秘訣でもあり、薪の火力、投入する石灰の量、釜を移すタイミングなど、すべて経験を積んだ黒糖職人が見極めていきます。
すべてを手作業で進めていくため、”砂糖スメ”と現地で呼ばれる黒糖作りの時期は、朝4時半から夕方まで重労働の連続。ようやく黒糖作りが終わっても、釜洗いや道具の洗浄などと作業は続きます。
そんな重労働をしても、黒糖販売で得られる収入は多くはないという現状…。黒糖職人だけで生計をたてるのは難しく、親の仕事を継ぐ子も減り、後継者不足・高齢化という課題が浮き彫りになっているそうです。
そんな厳しい黒糖作りに参加し、課題を目の当たりにしながら種子島で暮らしていく中で、矢吹さんの心に引っかかっていたのは、島の先輩から聞いた「昔の海はもっとキレイだった…」の一言でした。海が汚れた原因の1つに「農薬が関係しているのでは?」と考えた矢吹さんは、震災での経験も重なり、「種子島の海をキレイに戻したい」と考えるように。考えに賛同した数人の移住者とともに、黒糖の原料となるサトウキビの有機栽培に取り組み始めました。
農薬を撒かれたことも…地元の先輩方、島への想い
移住して間もない、農業初心者の矢吹さんらが始めた有機栽培は、すぐには島の人には受け入れられなかったそうです。有機認証を目指し育てていた畑へ、「虫が出るから」という理由で勝手に農薬を散布されたことも。それでも矢吹さんは、諦めずに島の人たちや地域を尊重しながらコミュニケーションをとり続け、少しずつ有機栽培を認めてもらえるようになりました。
島の人々と交流を重ねながら試行錯誤すること8年、今では黒糖作りの現場でも欠かせない人物となり、高齢化が進む黒糖生産協同組合を支える1人です。




