5000年以上前、ナイル川流域で暮らしていた人々の人生が見える。米ニューヨークのブルックリン博物館が誇る古代エジプト美術コレクションを公開する「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」があべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)でこのほど始まった。彫刻や棺、宝飾品、土器、パピルスに加え、人間やネコのミイラなど、多彩な遺物を通して、3000年以上にわたって栄えた古代エジプト文明の実像に迫る展覧会だ。

米国最大規模とされる同館の古代エジプトコレクションから精選した約150点を展示。大きな特徴は、そこで暮らしていた「人々の暮らし」に焦点を当てている点だ。住居や食生活、仕事、子育てといった日常の営みを示す資料が並び、5000年以上前に高度な文明を築いた人々の生活像を具体的に浮かび上がらせている。

展示は3部構成。第1部「古代エジプト人の謎を解け!」では、当時の日常生活をひもとく。かつては奴隷がピラミッド建設に動員されて強制労働させられていたと考えられていたが、1988年の発掘調査によって、その説は覆された。実際にはピラミッドのそばに区画整理された町があり、そこで王侯や貴族、庶民もともに暮らしていた形跡が確認された。パンやビール、羊肉などが配給され、人々は豊かな生活を営みながらピラミッド建設に従事していたという。同章ではあこがれの職業だった「書記」を表した彫刻やレリーフ、女性にとって出産が命がけだったことが分かる護符、また当時の美の概念が分かる装飾品、日用品なども陳列。

エジプト考古学者の河江肖剰・名古屋大デジタル人文社会科学研究推進センター教授が監修を担当、最新技術によるピラミッド研究の成果を紹介している点も見逃せない。第2部「ファラオの実像を解明せよ!」では、最新技術による調査や3DCGを活用した解説により、「ピラミッドはどのように造られたのか」といった長年の謎に新たな視点から迫る。
見逃せないのは、研究成果を反映した「トリビア」パネルだ。「ピラミッド建設に従事した労働者たちは、1個9500キロカロリーのパンをおそらく4日に1度支給されていた」「末期王朝時代のエジプト人の平均寿命は29~33歳」など、驚くべきトピックスが各所で紹介されている。

終章の「死後の世界の門をたたけ!」は、足を踏み入れる前から、“声”によって異世界へと導かれる。古代エジプト語の宗教文書が再現された音声が流れる空間で、さまざまな棺やレリーフなどの精緻な工芸品に加え、人間のミイラ2体、ネコのミイラも並び、ピラミッドの中に入ったような気分になる。中でも「神官ホル(ホルス)のカルトナージュとミイラ」は、ミイラを納めたカルトナージュ(亜麻布やパピルスを漆喰で固めて重ねた素材)棺にカラフルな色が残り、当時の埋葬文化を物語る象徴的な作品だ。多彩な意匠からは、人々が死後の世界をいかに大切に考えていたかが伝わってくる。





