第2室の森村の部屋は、「広場にパノラマ絵画奇譚」。入り口の上にちょっと怪しげな昭和レトロ風ネオンサインが輝く。大阪にちなんだスポットで撮影した写真を、映画看板絵師とコラボして描き下ろしたシリーズ。四方の壁に8作がずらりと陳列されている。巨大サイズの作中には、三島由紀夫、ブリジット・バルドー、レーニン、マレーネ・ディートリヒ、などに扮した森村がいる。女優姿の森村は、驚くほど美しい。各作品に森村自身の音声メッセージもあり、異次元的な大阪を森村ガイドで歩き回っているような感覚に陥る。



やなぎがつくった第3室「坂道のオード(賛歌)」は、それまでの2室と対照的に薄暗い。「黄泉平坂」(日本神話で現世と黄泉との境目にあるとされる坂)をテーマとし、「あの世とこの世があるドロドロした世界」(やなぎ)が展開する。火・土・鐵(てつ)などを生んだ女神を題材とした鋳造作品や福島の桃果樹園を10年間撮影した写真作品などを紹介。さらに、作者ならではの舞台作品を収めた映像なども上映している。



3人の最新作が展示された第4室を抜けると、そこは白い光に満ちただだっ広い第5室「絶望するな。では、失敬。」。いくつかのキャンバスと展示台はあるが、品物はない。やなぎはこの部屋について「エアー展示」と表現した。ところがそこには時折「語り部」が現れる。
俳優、落語家、講談師、能楽師、ダンサーなど。アプローチは異なるが、森村・ヤノベ・やなぎが書いた台本を基にそれぞれが15分ずつ、毎日5回にわたってパフォーマンスを披露する。多彩な分野の表現者が3人の“消滅”アートを圧倒的なパワーで浮かび上がらせる仕掛け。消滅しながらも、やはりそこは「驚異の部屋」なのである。

森村は「私たち3人の表現は量や大きさ、饒舌性においても過剰だ。どうしようもない体質として、驚異の過剰性がある一方、真逆の消滅性も持つ。われわれは2つを注意深く見極めながら、危うい綱渡りを続けていくしかない」と話した。会期は7月20日(月・祝)まで。





