“物語”キーワードに名品220件を一挙公開 大阪市立美術館、開館90周年特別展 90歳以上は無料

LINEで送る

この記事の写真を見る(23枚)

百鬼夜行絵巻(部分) 原在中 筆 江戸時代・18〜19世紀 大阪市立美術館蔵 望月信成氏寄贈 ※会期中、巻替えあり
重要文化財 仏涅槃図 鎌倉〜南北朝時代・14世紀 長寳寺蔵【前期展示】

「第2話」「第3話」では美術品成立の裏側に光を当てる。「豊臣秀吉像 惟杏永哲 賛」(桃山時代・1600年)は、「豊国大明神尊像」と題され、神格化された秀吉像。作品にはちりめんのような絹が用いられており、秀吉の遺品が利用された可能性があるという。

 大阪を代表する日本画家・北野恒富(1880~1947年)が晩年に手掛けた「夜桜」(1943年/前期展示)は、上松松園「晩秋」と同じく「関西邦画展覧会」への出品作。舞妓がいなくなるとの噂を聞き、画家が惜別の思いを込めて描いた作品で、わずかに桜の花びらが散る中、小さな灯りを持つ舞妓の姿は美しくはかない。

夜桜(左隻) 北野恒富 筆 昭和18年(1943) 大阪市立美術館蔵 住友コレクション 【前期展示】

 技法に注目すべき作品も。「蒔絵子犬形香合」(明治時代・19世紀)は犬の形をした高さ7.5センチの容器。蒔絵技法による漆工品で、毛並みや模様は金銀蒔絵を交えて描かれている。かわいらしい丸いフォルムだが、よく見ると表情に哀愁が漂っている。

 ハイレベルな職人たちによる協業を伝えるのは「橋姫蒔絵硯箱」(江戸時代・18~19世紀)。多様な手法の蒔絵によって、蓋(ふた)の表に「源氏物語」を、裏に「伊勢物語」の一節を表す。表に象牙製の水車がはめ込まれており、蓋を手に取って傾けるとくるくると水車が回り出す。見えない部分に金属製容器が仕掛けられており、そこで循環する水銀を動力として、水車が動き出すメカニズム。江戸時代の人々にとって、実用的な硯箱というより、びっくり箱であっただろうことは想像に難くない。

蒔絵子犬形香合 明治時代・19世紀 大阪市立美術館蔵 カザールコレクション
橋姫蒔絵硯箱 江戸時代・18〜19世紀 大阪市立美術館蔵 カザールコレクション

 同館の内藤栄館長は「90年を振り返ると、戦争に振り回された一方で、多くのコレクターから寄贈していただいた歴史がある。美術館は人との出会いで育ってきた。作品たちが語る物語によって、歴史を感じてもらいながら展覧会を楽しんでほしい」と話した。会期は6月21日(日)まで。

LINEで送る

関連記事