奈良の寺院で守り伝えられてきた仏教絵画「南都仏画」の優品などを紹介する特別展「南都仏画―よみがえる奈良天平の美―」が奈良国立博物館(奈良市)で開催されている。米ボストン美術館と奈良国立博物館が約20年にわたり構想を重ねて実現した国際共同企画で、ボストン美術館が所蔵する南都ゆかりの仏画13件が一挙に里帰り。日本仏教美術の原点ともいえる南都仏画の誕生から継承、現代によみがえるまでの歴史をたどる、壮大なスケールの展覧会となっている。


本展では7世紀末から16世紀末にかけて、奈良の寺院との関わりの中で制作、礼拝された仏画作品を紹介。ボストン美術館所蔵の仏画をはじめ、仏画・仏像、絵巻物など計171件(うち国宝19件、重要文化財69件)を8章に分けて公開している。
第1章「法隆寺金堂壁画―日本仏画の黎明」は、独立した展示空間。その3面の壁に、1949(昭和24)年、火事で焼けた法隆寺金堂壁画の焼損前の姿を伝える模写作品が並ぶ。壁画のオリジナルは飛鳥時代に描かれ、アジア仏教絵画の最高峰とされた傑作。模写作品は、明治時代から昭和20年代半ばにかけて、当時の画家たちが手掛けた。国宝「伝橘夫人念持仏厨子」(飛鳥時代・7~8世紀/法隆寺)も展示され、空間全体がいにしえの祈りの場を再現している。

奈良時代、東大寺や興福寺などの大寺院を飾った華麗な天平仏画。同仏画を堪能できるのは第2章「天平の彩り」だ。赤や青、緑、紫を巧みに用いた鮮やかな彩色、力強くしなやかな線描が特徴で、国宝「吉祥天像」(奈良時代・8世紀/薬師寺)=8月2日まで展示=をはじめ、奈良時代の護国思想や国際色豊かな天平文化を象徴する名品がそろう。第3章「南都の平安仏画」では、平安時代に京都文化の影響を受けながらも奈良独自の発展を遂げた仏画を陳列。藤原道長が制作に関わったとされる国宝「両界曼荼羅(子島曼荼羅)」(平安時代・11世紀/子嶋寺)、国宝「十一面観音像」(平安時代・12世紀/奈良国立博物館)=8月16日まで展示=、国宝「普賢菩薩像」(同/東京国立博物館)=8月18日~9月13日展示=など。続く第4章「追憶の天平仏」では、平安時代末期以降の「天平復古」の潮流を紹介する。ボストン美術館所蔵の名品「釈迦霊鷲山説法図(法華堂根本曼陀羅)」(奈良時代・8世紀)と、それを忠実に写した東大寺の国宝「倶舎曼荼羅」(平安時代・12世紀)=8月25日~9月13日展示=を比較展示し、南都の僧侶や絵師たちが奈良時代の理想の仏の姿をどのように受け継ぎ、再生しようとしたのかを読み解く。
第5章「内山永久寺―南都仏師・絵仏師の競演」は本展の目玉の1つ。現在の奈良県天理市に所在し、「西の日光」とも称された名刹「内山永久寺」に焦点を当てる。同寺は明治初期の神仏分離で廃絶され、寺宝は散逸した。今回、その寺宝が国内外から集結。「四天王像」(鎌倉時代・1253年ごろ/ボストン美術館)や、「不動明王および八大童子像」(鎌倉時代・1269年作、1272年彩色/世田谷山観音寺)などが一堂に会する、きわめて貴重な機会となっている。





