スポンジのように無数の微細な穴を持つ「多孔質プラスチック」を50年以上作り続ける、トーメイ工業(兵庫県稲美町)。医療や半導体、AI関連まで幅広い分野を支える独自技術は、国内でも数社しか手掛けない樹脂焼結(プラスチック焼結)という製法によって生み出される。職人の感覚を受け継ぎながら、未来のものづくりに挑む現場を取材した。
トーメイ工業は、創業以来50年以上にわたり、多孔質プラスチックの製造を専門としてきた。同社の代表取締役・東繁徹さんによると、創業は明石市だが、移転後は40年以上にわたって稲美町で操業を続けている。
多孔質プラスチックとは、スポンジのように内部へ無数の細かな穴を持つプラスチック素材だ。身近なところでは塗り薬の塗布面などにも使われており、現在ではさまざまな業界で活用されている。
同社の強みは、粉末状の樹脂を焼き固める「樹脂焼結」という製法にある。粉末同士をつなぎ合わせながら、あえて隙間を残すことで微細な穴を形成する技術で、国内でも手掛ける企業は5〜6社ほどしかないという。穴の大きさは平均約100ミクロンと髪の毛より細く、肉眼では確認できないほどだ。
その製品は医療分野でも活躍している。新型コロナウイルスのPCR検査で使われたフィルター部品など、目立たないながら社会を支える部材として採用されてきた。近年は半導体やAI関連の製造工程からも引き合いが増えており、活躍の場はさらに広がっている。
一方で、この技術は簡単には真似できない。粉末の状態を見極める感覚や製造条件の調整には長年培われたノウハウが欠かせず、職人が粉を手で触るだけで「作りやすい」「作りづらい」を判断する場面もある。その技術を若手へどう継承していくかが、会社の大きなテーマになっている。
同社製造部課長補佐の居戸靖明さんも、現場で製造に携わりながら品質管理を担う一人。粉末の扱いが難しいからこそ責任は大きいが、「他にはないものを作れたときの達成感がある」と話す。さらに、ベテランと若手が思いやりを持って支え合いながらものづくりを進める社風も、この仕事の魅力だという。
東さんは、「目立たないけれど、なくてはならない部材を作る会社が兵庫県稲美町にあることを知ってもらえたらうれしい」と語る。最先端分野を支える技術と、それを受け継ぐ人の力。トーメイ工業は、日本のものづくりを支え続けている。


