◆「敵チームのファン」も歓迎する、という発想
スポーツと鉄道の組み合わせは、JR西日本にとって今回が初めてではない。4年前からファジアーノ岡山と包括提携を結んでおり、大阪エヴェッサとのスタンプラリーなど各地で実績を積んできた。JR西日本の奥田氏は、その経験を踏まえてこう語る。
「いろんなところからのファンが来る。そういった方々を敵対視せず、リスペクトしてお迎えして、一緒に神戸の街で夜にお酒を飲んで帰っていただく。人と人とのつながりが、おそらく『また行きたい』という気持ちを呼び寄せる。スポーツツーリズムの真髄は、たぶんそこにあるんじゃないかな」
◆課題は熱狂を街に広げる仕掛け
課題は、アリーナの熱狂をどう街なかまで広げるかだ。渋谷順氏は、Jリーグのヴィッセル神戸と比べ、神戸ストークスのユニフォームが街で見られる機会はまだまだ少ないと率直に認める。目指すのは「試合後、居酒屋にうちのユニフォームの人がいっぱいいたよ」と話題になるような光景だという。
参考にするのは、音楽アーティスト・ゆずが横浜でライブをした際、街中に「隠れアイコン」を仕掛け、ファンが自発的に探し回って盛り上がったという事例。渋谷順氏は「街の中まで価値が染み出していくような世界観がつくれてきていれば、一つの成果だと思う」と話す。
具体的な連携は、すでに動き出している。8月4日・5日には、ストークス所属の八村阿蓮選手の兄で、NBAで活躍する八村塁選手が主宰するプロジェクト「ブラックサムライ2026神戸キャンプ」を開催。旅行予約アプリ「tabiwa」でのチケット販売に宿泊券や地元洋菓子店とのコラボ特典を組み合わせ、地域事業者を巻き込む形で、連携を実施した。
この後、ストークスを含むBプレミア参戦4クラブが集うプレシーズンマッチ「KOBE RISING -2026-」や、Bプレミアのストークスホームゲーム、さらに年末の自主興行で30〜60代のミドル世代をターゲットにした音楽フェス「KOBE MUSIC COMMONS」へと、連携する興行を段階的に広げていく計画だ。
JR西日本側は、tabiwaでのチケット連携を皮切りに、コード決済「Wesmo!」やスタンプラリーなど、段階的に施策を広げる考えだ。JR西日本理事近畿統括本部副本部長・兵庫支社長の平田恭子氏は、三ノ宮駅の駅係員への聞き取りから、アリーナへの行き方を尋ねる客が増えている実感を語った。「試合を見に神戸に来てみたら、試合はもちろん楽しいし、前後の街歩きも楽しいし便利。そういう素敵な神戸を再発見していただきたい」。
アリーナと三ノ宮駅の間には直接の鉄道路線がなく、物理的な距離が残る課題でもある。これについて奥田氏は「途中、途中に楽しみがあれば、時間的距離を一気に縮めるものだと思っている」とし、ID・決済・ポイントの連携によるデータ活用で、感覚的な距離を縮めていく考えを示した。
◆まず3年、その先に見据えるもの
連携の期間について渋谷順氏は「まず3年くらいで一つの成果を」としつつ、「もしかすると10年、20年とずっと地道に継続しながら」、コンテンツ(アリーナの興行力)とアリーナ、モビリティを掛け合わせて街を活性化させる「神戸モデル」を育て、他都市へ広げていく可能性にも言及した。全国でスタジアム・アリーナの建設が相次ぐなか、施設が地域のハブとなる仕組みを一つのプラットフォームにしていきたいという。
三ノ宮駅前では2029年度完成を目指し新駅ビルの建設が進んでおり、平田氏は「神戸の魅力発信基地」としての機能を持たせたいと話す。神戸市の理事兼港湾局長・山本雄司氏は「それぞれの強みを掛け合わせた今回の取り組みが、まちのにぎわいと魅力向上にもたらす効果は非常に大きい」とし、市として全面的にバックアップする姿勢を示した。






