税金の値上がりや老朽化など、古い建物や空き家に対し「どうしよう」と悩む持ち主は少なくないかもしれません。ですが、建築士の目には違うモノが見える場合もあるようです。姫路市出身の建築士・土田昌平さんは「良くなったら、すごい振れ幅が作れる」と、これらの可能性について触れます。また、「人口が減少し続ける状況で、新しいものを次々とつくるのではなく『あるもの』を見つけることがこれからのまちづくりには必要」とも。詳しく話を聞きました。

☆☆☆☆
本業では建物の設計に携わりつつも、「エリアディレクター」として姫路駅西エリアのまちづくりに取り組んでいる土田さん。前職では「アクリエひめじ」の設計プロジェクトの一員として設計に携わり、現在は「MONZEN」の設計にも参加。建物をつくる仕事から、建物のある「まち」そのものを考える活動へと、視野を広げてきました。
そのきっかけの一つとなったのが、2021年に姫路市が開催した「リノベーションスクール」だとか。革職人・コーヒーショップ店主・デザイナーなど、さまざまな仕事をする人たちと街について考える中で「敷地には価値はなく、エリアにこそ価値がある」という考え方に出会ったといいます。建築士として、それまでは依頼された条件の中で建物を設計してきた土田さんにとって、「そもそもこの場所には何があればいいのか」と考える経験は、大きな転換点になったそう。
建物単体ではなく、その周りに「どんな人・店・暮らし」があるのか視点を広げることで、建築の仕事からまちづくりへと活動の幅が広がっていったと土田さん。そのひとつが、姫路駅西エリアで毎月第3土曜日に開いている朝市で、2022年から今日まで続いています。朝市の目的は「普段のまちにある店や人・暮らしを生かしながら、新しい人が関わるきっかけをつくる」こと。単なる集客でなく、“そこにある日常”を大切にしたまちづくりを目指しているそうです。

さて、前職では大規模な文化施設「アクリエひめじ」の設計プロジェクトにも参加した土田さん。設計を請け負った会社の一員として携わる中で、意識したのが「姫路らしさ」を建物に取り入れることでした。大ホールの天井に広がる「星空照明」は、姫路城が築城された1609年10月の星の配置を再現したもの。明るい星には明るい照明を配置するなど、細かな部分まで工夫されています。
外観にも、姫路らしさを感じさせる仕掛けがあります。緞帳を収納するために必要だった部分を姫路城の天守閣のように見せることで、建物そのものに地域の物語を忍ばせたそうです。

☆☆☆☆
「視点を変えれば、まちの魅力になり得るものはすでにある」。そんな思いを土田さんの話から感じ取ることができました。
(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「ヒメトピ558」2026年8月23日、9月4日放送分より


