お盆も終わり、少しずつ暑さも和らいでくるころ、兵庫県の神戸市内では子どもたちが徐々に熱を帯びてくるイベントがある。それは「地蔵盆」だ。
関西以外の地域では知らない人も多いと思われるが、例年8月23日・24日頃、町中にあるお地蔵を町内の人たちが子どもたちの健やかな成長を願いお参りするものだ。京都府や大阪府、そして兵庫県内の限られた地域で行われる行事のため、関西在住でも知らないという方も少なくない。その「地蔵盆」だが、地域の子どもたちが熱くなるのには、理由がある。
それは、地蔵をお参りするとお菓子などがもらえること。神戸市では中央区や兵庫区の町内に地蔵が多く、ほとんどが夕方から開催される「地蔵盆」のときに、街中に自転車に乗った子どもたちがあふれ、地域内を走り回っていく。「ここの地蔵さんはこんなんもらえた!」、「あそこでも地蔵盆やっている!」、すれ違う小学生たちは、情報交換をしながら神戸の街中を颯爽と駆け抜けていく。
神戸市に住む小学生6年生は「ハロウィンはあめしかもらえへんけど、地蔵盆は(いろんな)お菓子がもらえるから、地蔵盆の方が好き」とにっこり。また40代のお母さんは「今は違うところに住んでいるけど、地蔵盆のために子どもと帰ってきた。どこにでもあると思っていたが、引っ越して地蔵盆がなかったので、毎年戻ってきて参加している」と話す。
ただし、今年はコロナの影響で多くの地蔵盆が中止に。夏祭りと同じく、子どもにとって楽しめる機会がなくなってしまうのは、なんとも寂しい限りだが、今は我慢のとき。普段からお地蔵さんにも「コロナ終息」「無病息災」を願いつつ、日々を過ごしていきたい。
ハロウィンとは異なり、日本独自の文化である、「地蔵盆」。夏の終わりに子どもたちを笑顔にする、親しみあふれるお祭りは、貴重なもの。京阪神ならではの風物詩だが、恵方巻のように、いつか全国に広がる日も来る、のかもしれない。だからこそ、早くも来年の「地蔵盆」が待ち遠しい。