「それでも演劇を続けるために、せーのでキッカケを作ろう。」を合言葉に、9月19日(土)と20日(日)に、大阪市北区のABCホールで、「ターニングポイントフェス~関西小劇場演劇祭~」が開催される。
現在、大打撃を受けている関西小劇場界が声を上げ、立ち上がったこのイベント。その実行委員会のひとりであり、劇団「リリパットアーミーⅡ」の座長を務める、劇作家・演出家のわかぎゑふさんが、ラジオ関西『シンコペ!~enter the エンタ~』のリモートインタビューに登場。自らのベースとなる小劇場への思いやこだわりについて語った。
今回のインタビューは、番組の8月ゲストで、「ターニングポイントフェス~関西小劇場演劇祭~」発起人でもあるゲキゲキ/劇団『劇団』(通称:ゲキゲキ)の主宰・古川剛充さんへのインタビューがきっかけとなっている。
歌舞伎や伝統芸能など、舞台関連の幅広い仕事にもかかわる、わかぎさん。大きな劇場でその空間を演出する面白さはありつつ、演劇の“ホームグラウンド”といえるような小劇場への思いには、ひときわ強いものがあるという。
「よく学生から(演劇などを)はじめて、お金がないから小さい空間で芝居をするところ、それを小劇場だと思って、世間の人も、なんなら俳優とかもそう思っているかもしれない。でも、お客さんが真近にいるところで、人が演出できるのは、小劇場なんですね。人を見せられる、人間の心理を見せられるのが、あくまでも小劇場だからこそ。それは映画ではできない。生きている人間が何ひとつ、嘘がつけないのが、小劇場(のよさ)です」
小劇場は一つの文化であり、それはなくなってはいけないもの。わかぎさんはそう訴える。
「小劇場は、本当にスリリングな空間で、海外の俳優さん、アメリカのハリウッドの俳優でも、絶対小劇場でやろうとするし、それが一つのステータスでもあるんです。お客さんの前で嘘は付かない、本気で芝居する、そして、その人間が、そこにいたように思わせる。その醍醐味は小劇場じゃないと絶対に作れないから、大きい劇場から、小劇場までお仕事があるのは私にとって、すごくうれしいことです」
一方で、今の演劇界の風潮にも物申す。「だいたい有名になった人たちが、小劇場出身なのに小劇場に出なくなっちゃんうのが悪いんですよ! たまに、自分たちの試練を感じに帰ってきて出れば良いのに、大きい芝居にしか出ないようになるから、『小劇場はステップアップの場所なんだ!?』と思われちゃうんですよね……」。演劇界を担い続けてきたからこそ、原点の重要性を実感している。
かつて大阪には、扇町ミュージアムスクエアや近鉄小劇場といった、小劇場のメッカともいわれた場所があったが、ともに閉館。「報道で『もう小劇場の火が消えた』とか、まるで劇団がなくなったみたいなふうに報道されて、3~4年、その風潮もぬぐえず、悔しい思いをした」。当時のことがあるからこそ、わかぎさんは、関西の演劇界、そして、小劇場へのこだわりを強くしている。
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わかぎゑふ プロフィール
1959年2月13日生まれ、大阪府出身
関西小劇場の劇団「リリパットアーミーⅡ」二代目座長。大阪弁の人情喜劇、明治以降の近代日本の庶民劇に定評がある。
2000年度大阪市きらめき賞受賞。2001年度大阪舞台芸術奨励賞受賞(『お祝い』の作、演出にて)。2011年度バッカーズ・ファンデーション演劇激励賞受賞(三軒茶屋婦人会「紅姉妹」脚本に対して)。
古典への造詣の深さも有名で、歌舞伎「たのきゅう」「色気噺お伊勢帰り」新作狂言「わちゃわちゃ」「おうみのおかげ」などの作・衣裳・出演なども担当。
また、大劇場から小劇場まで縦横無尽に演出できる数少ない女性演出家のひとり。コロナ自粛期から明けた2020年6月1日に歌舞伎の中村鴈治郎と「亥々会(いいかい)」を早々に立ち上げ、新作狂言「棒しばり×棒しばり」(出演=中村鴈治郎、茂山逸平)の作・演出を担当。
2014年度から京都藝術大学の非常勤講師。日本劇作家協会、日本演出者協会(現理事、関西ブロック長)日本ペンクラブに所属。
ラジオ、テレビへの出演、ドラマの脚本、エッセイ本も多数。自身のイラストの入った集英社文庫から出ている大阪シリーズが広い世代に人気。NHKで放映中の『リトル・チャロ』シリーズの原作者で、現在は英語番組『ボキャブライダー』を担当。
【活動詳細】玉造小劇店ホームページ