東日本大震災での東京電力・福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷の罪で強制起訴された東電の旧経営トップ3人を、無罪とし刑事責任を否定した、9月19日の東京地裁の判決を不服として、検察官役の指定弁護士が控訴したことが関係者への取材でわかった。
原発事故で福島県富岡町から会津若松市に避難し、旧経営トップ3人の刑事告訴に加わった古川好子さんは、ラジオ関西の取材に対し「これまでの強制起訴裁判での有罪率の低さをみると、私たちにとって厳しいことは覚悟していましたが、あまりにも素っ気ない結果で言葉が出ません」と憤った。
19日の判決は「原発の運転を停止しなければならないほど巨大な津波が来ると予測できなかった」とし、「事故当時の法令上の規制や国の審査では、 極めて高度な安全対策までは求められていなかった」とも指摘している。しかし強制起訴を決めた検察審査会での市民の感覚は「原発の事業者は極めて高度な注意義務が必要だ」としており、判決との大きな隔たりが浮き彫りとなった。
検察官役の指定弁護士は「国の原子力行政に忖度した判決だ」と批判し、事故の被害者でつくる団体も控訴を求める署名活動をしていた。ところが、日本の刑法では原則的に個人しか処罰できないことから、企業が関わった大規模な死亡事故で、個人の刑事責任を問うにはハードルが高く、「組織罰」の導入を求める声がさらに強まる可能性もある。
こうしたなか、JR福知山線脱線事故などの遺族が中心となり立ち上げた「組織罰を実現する会」は、この判決について東電の経営トップが「知らなかった、予想できなかった」という弁解をそのまま認めた極めて不条理なものだと批判している。また「このような判決が容認されると、重大事故が起こった場合、その責任の所在が追及されないまま放置されてしまう。それは新たな重大事故を引き起こすこととなり、多くの国民の命や生活が脅かされる状況が続くのでは」と懸念している。(ラジオ関西ニュース)