神戸市中央区の商店街で2019年4月、特定抗争指定暴力団「神戸山口組」直系組長(66)が襲撃され、対立する「六代目山口組」系組員らが殺人未遂などの罪で起訴された事件で、裁判員裁判の対象から除外するよう求めた神戸地検の請求に対し、神戸地裁が却下したことがわかった。9月23日付。神戸地検は決定を不服として即時抗告している。
裁判員法では、裁判員の生命、身体、財産などに危害が加えられる恐れがある場合、裁判員裁判の対象から除外すると規定。これまでに除外されたケースの多くは暴力団関係の事件だった。
神戸地検は2020年2月、神戸市や尼崎市で相次いだ「2つの山口組」の抗争事件4件について「暴力団特有の組織性があり、関係者が裁判員に報復行為に及ぶ恐れがある」として神戸地裁に裁判員裁判からの除外を請求していた。
これらの事件は検察側、弁護側(場合によっては被告も)、裁判所の3者協議「公判前整理手続き」が進んでいるが、こうした訴訟指揮については担当の裁判長(部総括判事)に一任されている。
裁判員裁判が開かれた場合、暴力団関係者が傍聴すれば裁判員の顔が見えることから、裁判員の身に危険が及ぶ恐れがある。2016年5月、福岡地裁小倉支部で特定危険指定暴力団「工藤会」(福岡県北九州市)幹部に対する殺人未遂被告事件の裁判員裁判の審理後、元工藤会系暴力団組員らが裁判員に「あんたらの顔は覚えとるけね」などと声を掛けるという事件が発生した(この組員らはのちに裁判員法違反の罪に問われ有罪判決を受けた)。
「工藤会」が関与したとされる一連の事件では、このほか一般市民が襲われた殺人や組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などの裁判で福岡地裁が裁判員裁判から除外する決定をしている。