尼崎市で在宅医療に取り組む長尾和宏医師。これまで2500人を看取ったドクターで、「痛くない死に方」の著者として知られています。「家が病室で、街が病棟や」と患者のために昼夜を問わず走り回る長尾さんに密着取材した、ドキュメンタリー映画『けったいな町医者』が2月26日(金)、神戸国際松竹・なんばパークスシネマ・京都シネマなどで公開されます。
長尾さんは1958年、香川県生まれ。尼崎市、伊丹市で高校生まで過ごしました。大阪大学病院、市立芦屋病院に務めたあと、1995年に尼崎市で長尾クリニックを開業。日本を代表する在宅医療のスペシャリストとして、死をタブーにせず、“がんになっても自宅で看取る医療”を続けています。
『けったいな町医者』って、失礼なタイトルだなあと思いましたが、長尾さんは自ら「町医者」を掲げて日頃から医療活動をしています。朝も昼も夜も関係なしに、病院も自宅も関係なしに、患者のことを第一に精力的に活動するお医者さんで、いつも明るく笑ったり歌ったりする姿が印象的です。
この作品では、医師として長尾さんが地域の人たちとおしゃべりしている会話がそのまま、映し出されます。患者さんの独り暮らしのおばあちゃんの家を訪問して、おばあちゃんに声をかけて話を聞きだして、どんな処置をすればいいか判断して、自分の携帯電話の番号を伝えて「何かあったら連絡してね」と声をかけます。
驚くのは、長尾さんが日頃から「病気になったら、病院へ入院してはいけない」という場面。とくに「がんになったら入院してはいけない」のだそうです。
病院のお医者さんの仕事は人の命を少しでも長く延ばすことで、このために抗がん剤を次々と投与します。点滴をして、腹水がたまれば抜く、という繰り返し。患者はやがて病院のベッドの上で管だらけになって苦しんで、亡くなっていくということです。
誰でも、死ぬときは穏やかに逝きたい、と思っています。長尾さんは在宅医として「人間の尊厳とは何か」という考えのもと、患者を看取ります。病院で薬漬けになって苦しみながら亡くなるのではなく、自宅で薬をなるべく使わず穏やかに過ごし、“木が枯れていくように”最期を迎えるのを尊重しています。
こうした活動について長尾さんは、父親が鬱病を患って薬を飲みながら結局、自殺してしまったことから町医者になろうと決めた、とラジオ関西の番組で明かしました。
映画『けったいな町医者』
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