スイスを代表する作家3人の絵本を集めた特別展「こわくて、たのしいスイスの絵本展 ~クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界~」が、神戸市東灘区の神戸ファッション美術館で開かれている。2021年3月28日まで。
時期は少し異なるが1900年代前半に活躍した3人の原画やリトグラフ、手書き絵本などおよそ150点が展示されている。
エルンスト・クライドルフ(1863-1956)は、絵描きになりたかったものの経済的な理由からリトグラフの職人の道へ進み、後に美術学校で学んで夢をかなえたという経歴を持つ。アルプスの草花を擬人化した「花のメルヘン」のほか数々の絵本を手掛け、ヨーロッパの絵本作家の先駆けとなった。会場には、「花のメルヘン」1898年の初版リトグラフ(石版)が並ぶ。神戸ファッション美術館の仲井雅史学芸部長は、「リトグラフの職人だったクライドルフ自身が手掛けた(刷った)可能性があるかも」と話す。
ハンス・フィッシャー(1909-1958)は、勢いのある線が特徴。自由自在に描いているようにも見えるが、何度も構成を重ねた上でたどり着いた表現という。リトグラフでも手描きのような線が見て取れる。「ブレーメンの音楽隊」や「こねこのぴっち」などを発表し、人気を博した。また、赤ずきんやヘンゼルとグレーテルなどのストーリーを1枚の絵に詰め込んだメルヘンの絵本も展示されている。
フィッシャーが「ジャズ的」と例えられるのに対し、フェリックス・ホフマン(1911-1975)は、「交響曲的」と例えられるという。娘に贈るために手作りした「おおかみと七ひきのこやぎ」は、日本でも人気となった。おおかみの腹を母やぎが切るという残酷な場面もどこか愛嬌が感じられる他、やぎたちの家はホフマンの最初のアトリエがモデルになっているという。
スイスには、美しい草花からは想像できないような厳しい自然環境がある。3人が手掛けた絵本や挿絵には楽しそうに見えてこわい場面や、こわそうに見えても楽しい場面が描かれている。仲井学芸部長は「日本では知られているようで知られていない3人。それぞれの個性ある表現を楽しんでほしい。また、1点1点が一つの作品として楽しめる。絵本のストーリーとは関係なく、見ている人の想像で新たなストーリーを紡ぐのも面白いのではないか」と話す。
また、会場にはスイスに代表されるアルプスのほか、グアテマラや東南アジアの山岳地帯など山に暮らす人々の「ハレの場」での衣装も展示されている。
【イベントは終了しました】
「こわくて、たのしいスイスの絵本展~クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界~」
2021年1月30日(土)~3月28日(日) 月曜日休館
神戸ファッション美術館
神戸市東灘区向洋町中2-9-1