国内外で幅広く活躍し続ける、劇作家・演出家の平田オリザさん。2019年から兵庫県豊岡市へ移住し、生活を送られています。その平田さんが但馬・豊岡の地で日々過ごしながら、感じたことを赤裸々に語るコラム、「平田オリザのまちごよみ」。第4回のテーマは、兵庫・豊岡のブランドを確立した『豊岡鞄』と、そのカバン産業を支えるスペシャリストたちに関するお話です。
豊岡には、「トヨオカ・カバン・アルチザン・スクール」というカバンのデザインに特化した学校があります。毎年、日本中から入学者があり、今年も12名が卒業。なんと、そのうちの11名が豊岡に残ったそうです。
『豊岡鞄』(とよおかかばん)の歴史は古く、円山川(まるやまがわ)下流の湿地帯に自生する行李柳(コリヤナギ)を原材料にした柳行李(やなぎごうり)が、その発端といわれています。ただし昭和の時代までは、豊岡で作られたカバンは、どちらかといえば下請け生産が主でした。
しかし、下請け生産だけでは労働力の安い中国や東南アジアに負けてしまいます。そこで豊岡では、カバンメーカーさんが協働して、ブランドイメージの確立に努め、「カバンの町・豊岡」を育て上げました。
今では高級カバンの代名詞として「豊岡鞄」は全国に流通し、生産量も日本一を誇っています。
城崎温泉にも、何軒ものパイロットショップがあるほか、全国で豊岡カバンの専門店も増えてきました。