兵庫県警・灘警察署(神戸市灘区)の男性警部(59)が、高校時代の同級生だった男性に捜査情報を漏らしたとして、兵庫県警は26日、地方公務員法(守秘義務)違反容疑で警部を書類送検し、停職3か月の懲戒処分とした。警部は同日付で依願退職した。
兵庫県警によると、この男性は人権団体の会長(のちに自殺・当時59)で、この団体の前会長(複数の詐欺罪などで起訴・59)による、インドネシアでの金の取引事業への投資名目で現金計5千万円を詐取したとされる事件で被害に遭った会員の取りまとめをしていたという。その際、事情を知らないまま前会長の指示を受け、詐取金の回収役となって刑事告訴された仲間の幹部が逮捕されるのを回避しようと、これら一連の詐欺事件の捜査主任を務めていた警部に接触、組織内でのトラブルについて相談を持ち掛けた。
このため警部は2020年8~10月、 被害者の証言や検察庁との協議内容といった事件捜査の進捗(しんちょく)に関することを無料通信アプリ「LINE(ライン)」で男性に伝えていたという。警部は送信した目的について「被害者連絡の意味合いだった」と説明していた。 警部に対する第三者からの働きかけはなかった。さらに警部と男性との飲食など不適切な交際も確認され、兵庫県警は贈収賄容疑を視野に捜査したが、警部は情報の漏えいを認める一方、金銭の授受は否定したという。一方、 男性は2021年2月、神戸市内の自宅で自殺した。
捜査関係者によると、警部と男性とのラインのやりとりは38回確認され、このうち捜査情報に関するものは5回とされる。
奈良県警が2020年12月、一連の詐欺事件で債務の返済目的で前会長の妻から現金を脅し取った恐喝容疑で、男性ら8人を逮捕。押収した男性のスマートフォンに、警部とラインでやりとりした形跡があっため発覚した。 兵庫県警は書類送検の際、起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。また男性が死亡したため、 贈収賄容疑での立件は見送った。
警部は汚職や知能犯事件を扱う捜査2課の経験が長く、2019年3月に灘警察署・刑事2課長に着任した。なお、一連の詐欺事件の捜査は終結している。
兵庫県警・監察官室は「警察業務に対する信頼を失墜させたことを深くおわびする。業務管理と倫理教養を徹底し、再発防止を努める」とコメント。