2007年に『聖職者』で小説推理新人賞を受賞し、『告白』『贖罪』『未来』などの作品を生み出してきた小説家・湊かなえさん。“イヤミスの女王”とも称され、多くのミステリー小説ファンに愛されている。そんな湊かなえさんが、放送部を舞台に、全国大会を目指す生徒たちの学園青春物語を描いた『ブロードキャスト』を発表。そして2021年には続編である『ドキュメント』がKADOKAWAから出版された。インタビュー前編では、放送部と湊かなえさんとのつながり、そして『ドキュメント』を執筆した際のこだわりについて聞く。
◆放送部と湊かなえさんの出会い
――湊さんご自身は、学生時代に放送部にいたんでしょうか?
私は剣道部でした。出身校にも放送部はありましたが、校内放送や学校行事など校内だけの活動だと思っていて……。作家になる前は高校で家庭科の講師をしていたのですが、その高校で放送部にも全国大会があると知りました。テレビドラマを作ったり、そんな面白いことを高校生がしているのに、知らない人が多いのはもったいないと思って、今回のテーマとして取り上げさせてもらいました。
――実際に、放送部の学生さんが作った作品を見たことはありますか?
放送部を舞台にした話を書こうと決めてから、取材を兼ねてNHK杯全国高校放送コンテスト・全国大会の準決勝を見学させてもらいました。そして生まれた『ブロードキャスト』を刊行したことを契機に、2019年には全国大会決勝のゲスト審査員もさせていただいて。取材以上のものを見せてもらい、体験させてもらいましたね。知れば知るほど、この世界をもっと多くの人に知ってほしいなと思いました。
――審査員という立場を体験してみて、印象的だったことはありますか?
例えばアナウンス部門だと、自分は作家なので句読点を気にしたり、一番言いたいことを原稿のどこに持ってきているかに注目していたんですが、アナウンサーの経験がある審査員の方だと「この音の発音を正しくできる人が少なかった」とコメントしていたりして。審査する人によって視点に違いがあることが印象的でしたね。
◆『ドキュメント』に込めたこだわり