カメ研究の常識をくつがえす新発見―。アマゾン川に住むカメの親子が鳴き声でコミュニケーションをとっていることが分かり、日本のカメ研究をリードする「神戸市立須磨海浜水族園」がブラジルの研究者を表彰することになった。水族園では記念の特別企画として、一般家庭で飼っているカメを園に呼んで鳴き声調査を進めるなど、この夏を通じてカメのイベントを連続して開催する“カメづくし”の計画を立てている。
カメの鳴き声を明らかにしたのは、ブラジルのカミラ・フェラーラ博士。カメの仲間には声帯がないことから、これまで世界のカメ研究者たちは誰もカメが鳴くとは考えなかったという。カミラ博士は、アマゾン川に棲む『オオヨコクビガメ』が鳴くのを発見した。オオヨコクビガメの卵が砂の中でふ化したあと、子ガメが砂の中から鳴き声を出して母ガメを呼び、この声を聴いた母ガメが鳴き返すことが分かったのだ。
ラジオ関西『時間です!林編集長』コメンテーターで神戸市立須磨海浜水族園学術研究統括/岡山理科大学地球生物学部教授の亀崎直樹氏によると、「カメの鳴き声の周波数は40ヘルツ~4,500ヘルツで、人間には聴き取りづらい低さ」だという。「カメは2億年前から生存しているとされているが、人間に分からないようにカメ同士でコソコソと内緒話をしていたことになる」と笑う。須磨海浜水族園と海洋生物学者で組織する「神戸賞」選考委員会は、めざましい業績をあげたとして今年の同賞をカミラ博士へ贈ることにした。
また、水族園は「きみのカメは鳴いている?」として、世界初の特別企画を開催する。一般の家庭で飼育されているカメを園に呼び、鳴いているかどうか調べる研究だ。オオヨコクビガメのほかにアオウミガメやオサガメも鳴いていることが分かり、カメ類全般が鳴き声でコミュニケーションをとっている可能性があるという。単独で生活するカメは他者とのつながりが薄く社会性が低いと考えられてきたが、鳴き声で他者とコミュニケーションをとっているとするならこの考え方も誤りかもしれない。カメの音声コミュニケーションに関する研究はまだ始まったばかりで、今回の特別企画でどの種類がどういう状況で鳴くのか調査したい考えだ。
もし、あなたの家でカメを飼っているなら、本当に鳴くかどうか水族園が調べてくれる。参加するには事前申し込みが必要だ。
☆特別企画「きみのカメは鳴いている?」
【概要】
・参加者は、所定の日にカメを須磨海浜水族園に持参してください。
・カメは須磨海浜水族園が預かり、別室で録音作業を行います。
・預かったカメは受付時間から2時間ほどで参加者に返却されます。
・解析の結果表は出来る限りカメの返却時にお渡ししますが、間に合わない場合は後日郵送します。
※録音作業の立ち会いはできません。
実施日:2019年6月8日(土)~6月30日(日)の土曜・日曜 計8日
申し込み期間:各開催日の2週間前の日曜日まで
対象個体:全長30センチメートル以下、体重10キログラム以下の一般家庭で飼育されているカメ
※特定外来生物は除く
※特定動物は所定の手続きを所有者の責任でおこなうことが条件
※録音設備の関係上、対象サイズ以上のカメは録音できません
対象個体数:各日4匹 計32匹
参加費:無料
参加方法:須磨海浜水族園ホームページから申し込み(https://www.sumasui.net/school)
※申し込み多数の場合は抽選
須磨海浜水族園ではこのほかに、カミラ博士が鳴き声に気づいたオオヨコクビガメを見て、その鳴き声を聴くことができる企画展「カメは春から夏に鳴く」、有名なカメ学者が講演する「サイエンスカフェ」、それにカミラ博士の「神戸賞授賞式」を行うことにしていて、カメ愛好者が満喫できる夏となりそうだ。
神戸市立須磨海浜水族園公式サイト
http://sumasui.jp/