気持ちの良い風が吹き抜けるいい季節になりました。「爽やかな5月ですね」と言う方もいるかもしれません。ところが、その表現は正しいのでしょうか……。「爽やか」という言葉について、ラジオ関西アナウンサー・林真一郎が紹介します。
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「爽やか」という言葉、実は「秋」の季語です。(※季語=連歌・連句・俳句で、句の季節を示すためによみこむように特に定められた語/出典:広辞苑) このため、この時期(春)の使用には違和感を覚えます。
では、広辞苑には何と書いているのでしょうか。
(1)すがすがしく快いさま。気分のはればれしいさま。
(2)はっきりしているさま。
(3)あざやかなさま。
とあります。また、ずいぶん古い本ですが、1976(昭和51)年発行の日本国語大辞典(小学館)には、こうした意味に加え、「思いっきりのよいさま、すっぱりとしているさま」……などという意味も記載されています。
こうしたことからもわかるように、「爽やかな気持ち」などの使い方なら、1年を通じて問題ありません。気分や態度などでの使用も、意味と合致します。「爽やかな人」などの表現も同じと言えます。
「爽やか」は「この季節には絶対に使ってはならない」と、明確に否定する基準があるわけではありませんが、もし使うのであれば、季節に関係しないところがいいでしょう。ただ、私も含め、言葉を生業とする職業の人たちや、放送など公の場で使用する時には注意が必要です。
言葉は時代とともに変化します。「ことばコトバ」では、そんな言葉の楽しさを紹介しています。
(「ことばコトバ」第2回 ラジオ関西アナウンサー・林真一郎)