目に見えないほどの小さな穴が無数に開いている多孔質体の合成樹脂、「多孔質プラスチック」が、コロナ禍の今、注目を集めている。
多孔質プラスチックは、主に工場の装置の部材として使われているが、その他にも水をろ過するフィルターや、消音材にも活用されるなど、用途は様々。身近なものであれば、殺虫剤の殺虫成分を吸い上げるフィルターにも使われている。
そのなかで、特に需要が上がっている多孔質プラスチックが、PCR検査などで使用される「ピペット」という検査器具の先端に取り付けられているフィルターだ。お米より少し大きいサイズの白い粒状の形をしたもので、「先端に取り付け、患者さんの検体を吸い上げて、その検体を別の装置に移動させる役割をするが、一度使ったら他の人と混じってはダメなので、使い捨てで、数が非常に足りないといった状況」と実情を語るのは、多孔質プラスチックを製造・販売している、トーメイ工業株式会社の東繁徹代表取締役社長。
兵庫県加古郡稲美町に本社をおくトーメイ工業は、1975(昭和50)年に先代の社長が個人で創業。以降、多孔質体について開発を行い続け、今年で47年目を迎える。
多孔質プラスチックを製造しているのは国内では数社と少なく、西日本では同社だけとのこと。「そういったピペット用のフィルターについても製造している所が非常に限られているので、現在は非常にいろんな所から引き合いが出ている状態。本当にいろんな所で使っていただいていて、用途にしても多岐に渡り、そこで要求される性能も様々。他の医療機器向けのフィルターや部材も増えているので、弊社としてもそちらに注力していきたい」(東社長)
今後について東社長は、「コロナの終息がまだまだ見込めないなか、感染症対策や従業員の安全というところを見つつ、製品のニーズは非常にあるので、社会的な要求にも答えられるように工場をしっかりと稼働させていくのが当面の目標」と述べていた。
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