中村児太郎、市川九團次、大谷廣松らの若手俳優が出演する市川海老蔵企画公演「いぶき、」が、6月17日から20日まで京都・南座で行われる。タイトルの「いぶき、」は、若い芽が出て成長して次につながり、一本立ちできるような、大きな木になることを祈って、市川海老蔵が決めた。そのなかで中心となっているのが中村児太郎。今回挑むのは『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』のお三輪。初役にかける意気込みを聞いた。
「これまで、『この役をやりたいと』と嘆願したことはあまりないのですが、どうしてもやりたいと言ったのが『壇ノ浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)阿古屋(あこや)』と、このお三輪だけです。『妹背山婦女庭訓』というお芝居がものすごく好きで、小学校2年生の時に『吉野川』という作品を見て、『なんて素晴らしい歌舞伎があるんだろう』と思って。女方を志すうえで、このお三輪というのは、どうしてもやっておかなければいけないお役かなと思います」
公演のきっかけは、3月の巡業中。海老蔵に直接、思いを伝えた。
「海老蔵のお兄さまとお話しする時間がたくさんあって、『公演をさせていただきたい』というお話をして了承していただきました。コロナの感染でやりたいお役ができない、公演に出たくても出られない人もかなり多くいる。その中でどうしたら、若手の歌舞伎俳優が頑張ろう、命をかけてやってみようって思ってくれるかなと思い、お願いしました」
新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言のため、昨年春から夏にかけて歌舞伎公演もすべて止まった。
「毎月公演に出ていて、ひと月乗り越えるのがやっとだったのですが、半年休みになって、楽器を改めてお稽古をし直すとか、昔の映像・音源を聴き直すとか、体のメンテナンスをするとか、いろいろと考えさせていただく機会になりました。多くの方が苦しい瀬戸際で頑張っているなかで、どうやったら自分は『頑張ろう』という思いを持てるかな、と考えました」
宣言明けの8月、久しぶりに舞台に上がった時は、これまでにないほど緊張したという。
「久しぶりの初日は……本当に緊張しました。半年空くと、声も体も心配だし、大丈夫かなって。無事に全公演が終わって、とにかく、(関係者が誰もコロナに)ならなかったことにホっとしました」
とはいえ、新型コロナウイルスとの闘いは続く。6月も公演で滞在中の京都市内のホテルと劇場の往復以外は外出せず、部屋にいるときは、ほぼ自主稽古にあてている。