「食パン専門店」が増え、近年、食パンブームとなっている。作り手それぞれに、原材料、味わい、食感などのこだわりがあるが、その中でも「パンから日本のオーガニックを変えたい」との思いを込めて作られた食パンがある。それはコープ自然派の「自然派Styleオーガニックハードトースト」だ。
こだわりは小麦。「オーガニックハードトースト」は北海道産有機小麦を100%使用している。
日本の小麦自給率は16%(カロリーベース、令和元年度概算)で、さらに有機JAS認証を取得している小麦となるとごくわずか。
このため、商品化までには多くの苦労があったという。今回、国産有機小麦100%のパン作りの開発経緯について、コープ自然派のパン事業を担う福井健一さんに話を聞いた。
日本国内で有機小麦を栽培する農家探しから始めたという、福井さん。オーガニック市場について、「消費者にとって価格が高く、手が出しにくいというイメージがまだまだ強い」と話す。
さらに、手が出しにくくなっている状況について、「有機農産物の生産量や流通量の少なさが希少性と捉えられ、本来の価値よりも高くなっていることもあるのではないか」と続けた。
福井さんは、この状況を変えるために、「農家に安心して有機農業に取り組んでもらえる環境をつくり、わたしたちに信頼を持ってもらう必要があった」と振り返る。継続的に環境づくりを行うことが、日本のオーガニックの裾野を拡げ、価格の安定にもつながると考えたからだ。
そのために、海外産有機小麦と併用しながらオーガニックのパンの販売実績を上げる作業に着手。その実績をもとに、「有機小麦の作付け量を増やしてもらうお願い」や、北海道の農家には小麦だけでなく、その畑で輪作されるじゃがいもなども一緒に買取る約束をしながら、「徐々に国産有機小麦の確保量を増やすしくみを作っていった」。