『部屋とYシャツと私』などのヒット曲で知られるシンガーソングライター・平松愛理が、コロナ禍の中で書きためた新曲を8か月連続で配信リリースする。2年ぶりのシングルとなる第1弾は、「やがて来る夜明け」を歌った『BLUE MOON』(6月16日から配信中)。楽曲誕生のきっかけを聞いた。
【平松愛理(以下、平松)】 昨年4月のスーパームーンの日、窓をコンコンとたたかれたように感じて開けると、大きな満月。しばらく外に出ていなかったので視界が一気に広がったような気がして、涙がこぼれてきた。それからずっと、ベランダを無観客のステージのように、月に向かって、「ラララ」と歌い続けた。「そうだ、私はもう何もあらがわず、じっと待とう」という気持ちとともに「いま世界中がステイホームで、とてもキレイになっている空から、人々が一つの目標に向かっていることを、見てくれていますか?」「夜明けはもうすぐやってくる。でもこの時期のことを忘れちゃいけない」……そんな言葉があふれてきて、すぐに曲に仕上げた。
<「コンコン」とやって来た月に導かれたのかもしれない。とはいえ、8か月連続のリリースは並大抵のことではないはずだ。>
【平松】 やけくそかな(笑)。部屋にひとり閉じこもり、逆境に挫けそうになる気持ちと、意識を外の世界に向けて「⼤丈夫」と奮い⽴たせる気持ちの両方がある。だけど、いろんなことができなくなって、引き算をした結果、残ったものは音楽しかないということに気づかされた。私にとって、伝えたいメッセージは音楽で伝えるべきだ、と。
<音楽の衣をまとう前に、彼女の中にはちゃんと伝えたい言葉が育っていたのだ。たったひとりで始めた動画共有サイトでの配信からも、いまを書き留める楽曲が生まれていった。>
【平松】 自分を追い込んでいるのかもしれない。言ってしまったらやらなきゃいけないので、みずから有言実行にもっていっている。一歩踏み出してみないことには転ぶかどうかもわからない。
<前向きに突き進むのもいい。じっと待つのもいい。誰も経験したことのない生活の中で、価値観だってひとつではないということが、この歌から伝わってくる。切迫感が少しゆるむようだ。>
【平松】 未来や夢も今までとは違い、既成概念のない、それぞれの新しい考えや⾒⽅で明⽇を作っていく時代になっていくと思う。