政府の新型コロナウイルス感染対策が迷走している。東京都への4度目の緊急事態宣言発令決定を受け、西村康稔・経済再生担当相が8日夜、飲食店に対する酒類の提供停止などの要請をめぐって「金融機関から働きかけを行っていただく」などと発言した。真面目に取り組んでいる事業者との「不公平感の解消」のためというのが理由だった。
しかし「非常識だ」と問題視され批判を受け、わずか1日で発言撤回に追い込まれた。民間の取引関係を通じて締め付ける手法に、憲法違反の恐れも指摘される。確かに政府側には、資金繰りを握る金融機関が働き掛ければ、酒提供停止の実効性が高まるとの思惑があった。しかし働き掛けは法律で禁じられた「優越的地位の乱用」に当たるという懸念も残る。
そもそも感染対策を講じている飲食店も含めて一律に酒類の提供停止を要請したことは飲食店の「営業の自由」を不当に制約し、違憲と評価されかねない。
一方、酒類の販売事業者に対する飲食店との取引停止の要請については、当初の方針通り、実施するという。ただ、政府の新型コロナ対策の基本的対処方針にはこうした措置は明記されておらず、経営が疲弊した業界からの反発が続きそうだ。意図的な圧力なのか、単なる失言なのか。藤本尚道弁護士(兵庫県弁護士会)に聞いた。
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■「まずもって“独禁法”に抵触か?」
金融機関と融資先事業者の関係では、金融機関が優越的地位にあります。金融機関からの融資がストップすると事業継続が困難になるため、融資先事業者としては、融資取引を継続するうえで、融資の取引条件とは別に、金融機関からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあるからです。このような優越的地位を利用して、正常な商慣習に照らして「不当」と評価し得る「圧力」を加えることは、独占禁止法の禁じるところです。
そもそも、西村大臣は、なぜこのような発言をしたのでしょうか。
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