国の文化審議会はこのほど、国の登録有形文化財(建物)に35都道府県の220件を加えるよう、文部科学大臣に答申した。このうち兵庫県では、宍粟市山崎町の「中門前屋(なかもんぜんや)主屋」と姫路市余部区の「旧八木家住宅」、姫路市御国野町の「鷹津家住宅」が選ばれた。
中門前屋主屋は、宍粟市で初めての国登録有形文化財となった。中門前屋は、江戸時代からしょうゆや酢の醸造・販売業を営んでいた商家で、伝えられる資料によると、主屋は江戸時代末期の嘉永4(1851)年に建設された。構造は、切妻造平入(きりつまづくりひらいり)、屋根は桟瓦葺(さんがわらぶき)。現在、姫路市のホテルが運営する古民家ホテルとして活用されていて、職人による飾り細工や巨大な梁、建具などは当時のまま残されている。
周辺には、現在も酒造りを行う老松酒造や山陽盃酒造など、酒造りに関連した建物が集まり、城下町山崎の歴史的景観を今に伝えている。この地域は兵庫県の歴史的景観形成地区にも指定。今回、中門前屋主屋が国の登録有形文化財への登録を答申されたことで、宍粟市の担当者は「山崎地区内にある多くの重要な建築を保護していくことへの理解が深まり、地域活性化や観光振興へのはずみになれば」と、期待を寄せる。
「発酵のふるさと」と呼ばれる宍粟市。酒やしょうゆ造りのように、じっくり時間をかけて育てられた歴史や文化を肌で感じてみたい。