兵庫県には8月20日から4回目となる緊急事態宣言が出された。これを受けて、9月9日から予定されていた「豊岡演劇祭2021」の中止が決定。同演劇祭のフェスティバルディレクターを務める劇作家・演出家の平田オリザさんが、自身の冠ラジオ番組でその胸中を語った。
8月26日の『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西)で、「今日の放送は豊岡演劇祭プロデューサー田口幹也さんをお迎えして7月に収録を済ませていたのですが、あっけなく使えなくなってしまいました。急遽前日に再収録しています。複雑な心境です」と切り出した平田さん。
「この1年半、劇場の客席からクラスターは発生しておらず、大きな発声などを伴わない演劇や音楽、映画の『鑑賞』については安全な場であることは政府、専門家会議からも表明されているが、但馬地域は今のところ比較的感染者が少ないこともあり、外からの人流には配慮しなければならない。『豊岡演劇祭』は観光やまちづくりと深くリンクしている」ため、慎重な議論の末の苦渋の決断だったと、平田さんは明かす。
とはいえ、同演劇祭に力を注いできた平田さんは、やりきれない思いもあるという。
「やるはずだった作品が世界的な名作になる可能性は常にあるんです。若手にとっては特にね。私自身、ヨーロッパで仕事ができるようになったのは、フランスで開催された1998年のサッカーワールドカップの記念事業で、参加32か国の作品を翻訳してリーディングする、という演目がきっかけだったんです。100人しか見ていない舞台だったんですが、その中に有力プロデューサーがいたんですよ。2年後にはパリで舞台が実現した。若手にとっては何がチャンスになるか分からない。そのチャンスの芽を潰してしまうのがフェスティバルディレクターとして申し訳ない。ただ、状況を考えると……」と率直な思いを吐露した。
但馬地域の地元観光業も厳しい状況にさらされている昨今。休業を選択する旅館、細々でも営業を続ける施設など様々だ。豊岡演劇祭とも密接にかかわるものだが、今回の決断については「『来年につなげていきましょう』と快く受け入れてくださった」。
芸術文化専門職大学の学生や地域おこし協力隊らも地域と深く関わりながら1年がかりで進められてきた豊岡演劇祭。今年は中止となったが、演目によっては配信も検討されている。詳しくは豊岡演劇祭の公式ホームページに掲載される予定。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2021年8月26日放送回より
※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp