兵庫県には、文化庁が認定した「日本遺産」が9件、国指定史跡のお城が22城あり、いずれも全国最多を誇る。また、1000を超す城跡や播磨国風土記など、個性豊かな地域遺産を数多く有している。そうした兵庫の歴史を学びながら、周辺のおすすめスポットを計15回のシリーズで紹介する。
【第4回】日本海の風が生んだ絶景と秘境-幸せを呼ぶ霊獣・麒麟が舞う大地「因幡・但馬」-
日本海から吹き付ける真冬の季節風。この凍てつく風が日本最大級の鳥取砂丘を創り上げ、目には見えない風の姿を砂丘に記し、さざ波模様の風紋を描いた。海岸を進む強風は、寄せては返す荒波となって岸壁を削り、奇岩・怪石を形作った。砂丘も、荒海にそそり立つ岩石の造形も「日本海の風が生んだ絶景」と言えるだろう。こうした厳しい風土にあらがい、乗り越えた人々は、大自然に感謝をささげ、暮らしの無事と平安を祈る儀式を受け継いできた。北但馬西部の香美町・新温泉町から鳥取県東部に伝わる伝統行事「麒麟獅子舞」である。ルーツは中国に伝わる伝説上の霊獣で、他の生き物を傷付けない「太平の世の象徴」とされる。麒麟獅子が呼び込む幸せは、この地を訪れる旅人にも分け与えてくれることだろう。
麒麟獅子舞は、北但馬西部の香美町・新温泉町から、鳥取県東部の鳥取市と岩美・若桜・智頭・八頭の4町に伝わる。約370年前に初代鳥取藩主・池田光仲が、偉大な曾祖父・徳川家康を祭るために創建した神社の祭礼で、麒麟の顔を持つ獅子舞として初めて姿を現したとされ、一角を持つ黄金の頭に緋色の衣装をまとった「麒麟獅子舞」が、約180の村々に継承されている。初めてきらびやかな姿を見た人々は「幸せを呼ぶ存在」として、「おらが村の祭り」にも取り入れたいと強く願い、村から村へと伝わるうち、同じ麒麟獅子でも、顔や舞の作法など、村ごとに異なる個性と形態を生みながら、発展していった。
「但馬」と「因幡」に京都府北部の「丹後」を加えた3つの旧国は、「山陰海岸ジオパーク」で強く結びつく。山陰海岸国立公園を中心に、東は京丹後市から、西は鳥取市西端まで、東西約120kmにわたって山陰海岸ジオパークが広っている。2008年に「日本ジオパーク」の認定を受け、2年後には「世界ジオパークネットワーク」への加盟が認定された。さらに、14年には現地審査を受け、第6回世界ジオパーク国際ユネスコ会議で「世界ジオパークネットワーク」への加盟が再認定される。日本列島がアジア大陸と陸続きだった約2,500万年前にさかのぼる、日本海形成から現在に至る様々な地形や地質が存在し、生き物や人々の暮らしと文化・歴史に触れられる地域だ。160万年前の火山活動によって形成された玄武洞(豊岡市)もその1つで、1926(大正15)年の調査で、第四紀(約260万年~現在)に地球の磁場が逆転した事実の発見につながった、国際的にも重要な場所となっている。
【参考文献】
・兵庫県公式観光サイトHYOGO!ナビ
・文化庁日本遺産ポータルサイト
◆おすすめスポット
山陰海岸国立公園「香住海岸」の絶景スポットを巡る「シーカヤック」
こうした山陰の雄大な自然を、海の上で楽しむ方法の一つが「シーカヤック」。シーカヤックとは、パドルを使って水をとらえながら海の上を前進・後退する乗り物で、初心者でも気軽に取り組める。最初は少々コツがいるが、座席以外が覆われている船体のため、波が来ても船内に水が入ってきにくく、多少の波や風を受けても転覆しにくい構造である。なんといってもその魅力は、「海面との近さ」。天候にもよるが、海中の地形や魚の群れをはっきりと見ることができる。同じ景色であっても、地上から眺めるそれとはまったく違った魅力を感じることができることだろう。
【兵庫県公式観光サイトHYOGO!ナビ】
【文化庁日本遺産ポータルサイト】
「歴パ!ひょうご地域遺産バトンリレー」アーカイブ記事
◆『歴パ!ひょうごの地域遺産バトンリレー』 2021年9月4日放送分