所在不明だった松方コレクションか? 姫路市立美術館・國富コレクションのマティス作「ニース郊外の風景」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

所在不明だった松方コレクションか? 姫路市立美術館・國富コレクションのマティス作「ニース郊外の風景」

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「実はあの時、オークション関係者が近づいてきて『松方が所有していたものだ』と耳元でささやいてくれたんです」

 そう語るのは、約半世紀前にロンドンのオークション「サザビーズ」に日本人でただ1人参加していた姫路市青山の医師・國富奎三さん(83)。「あの時」というのは1977年、オークションに色彩の魔術師アンリ・マティス(1869-1954)の描いた油彩画「ニース郊外の風景」(縦37×横45センチ)が登場した瞬間だった。國富さんは迷うことなく落札した。

 その「ニース郊外─」がこのほど、長らく所在不明だった「松方コレクション」のマティス作品「森の中に横たわる二人の女」にほぼ間違いないということが分かった。

色彩の魔術師と称されたアンリ・マティス作「ニース郊外の風景」

「松方コレクション」は、神戸市の川崎造船所(現川崎重工業)で初代社長を務めた実業家・松方幸次郎(1866-1956)が日本に西洋美術の殿堂を建てようとヨーロッパ中で収集した美術品約1万点からなる世界的にも有名な作品群。「森の中に─」は1921年にパリの画廊で購入したが、造船所の経営破綻や第2次大戦の戦火により多くの収集品とともに散逸してしまっていた。

 今回の発見は、松方コレクションの一部を撮影したガラス乾板が3年前にフランスで見つかったことがきっかけ。これをもとに東京の国立西洋美術館(国立西美)が「松方コレクション西洋美術全作品」を刊行、その中に収録された「森の中に─」を見た國富氏が「ニース郊外─」と同じものだと確信し、姫路市立美術館(姫路市美)に報告。姫路市美が国立西美と共同調査した結果、同一作品の可能性が極めて高いという見解で一致するに至った。確定できないのは、コロナ禍のため国立西美の担当者が来姫して実物を視認できていないからだ。

 とはいえ、何よりの朗報に國富さんは「事実が証明されれば、日本人が兵庫に持ち帰ったことに松方も満足してくれるだろう」と破顔する。しかし、喜ぶべきは姫路市民かも知れない。國富さんは姫路城の世界文化遺産登録を記念して1994年、この作品をはじめモネやピサロなど自身が収集してきたほかのフランス近代絵画50点とともに姫路市へ寄贈しているからだ。作品は、姫路市民の宝「國富奎三コレクション」として姫路市美で常設展示されている。(播磨時報社)

「ニース郊外の風景」を囲む國富奎三氏(写真左)と姫路市立美術館の永田萠館長
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