兵庫県警は4日、災害時に長時間の電力供給源にもなる電気自動車「アウトランダーPHEV」を、兵庫三菱自動車販売(本社・神戸市西区)が無償で貸与する協定を締結した。災害現場での指揮拠点や救出活動時の電源の確保が目的。三菱自動車販売グループによると、都道府県警察本部との協定は全国で初。
三菱自動車販売グループは2019年9月に台風15号の影響で千葉県で長期化した大規模停電をきっかけに、全国各地の自治体と同様の協定を締結してきた。当時は自治体などとのパイプがなく、電気自動車の貸与を申し出ることができなかった。
その後、積極的に全国で協定を締結、兵庫県内の自治体では5市町(神戸・姫路・西脇・加東の各市、播磨町)と協定を結んだ。今後30年以内に70~80%の確率で発生が予想される南海トラフ巨大地震に対する危惧感が高まる中、兵庫県警は災害訓練をはじめ、装備機材の充実や物資の調達に力を入れており、今回はその一環として、四輪駆動のプラグイン・ハイブリッド車の支援に関する協定を結んだ。
兵庫県では、2004年の台風23号による豊岡市の円山川決壊、2009年の兵庫県西・北部豪雨による佐用町での大水害をはじめ、毎年のように台風や大雨による甚大な被害が発生している。
「アウトランダーPHEV」は、一般家庭の電力なら1台で10日分を供給できる。この日は、兵庫県警本部(神戸市中央区)前でテレビとDVDプレーヤー(約150W)や電気ポット(約700W)、タブレット端末(約10W)、電気スタンド(約40W)の充電などを同時に稼働させる様子を披露した。通常の発電用車両ならば騒音も出るが、この車はほぼ無音であることがメリットだという。
兵庫県警の種部滋康(たねべ・しげやす)本部長は「阪神・淡路大震災では、停電対策用の発動機が断水で冷却水の補給ができず、電力の確保に困難を極めた。東日本大震災の救援では、停電による信号機の減灯や無線の使用による非常用電源確保とその搬送がネックとなった。今回の協定で貸与可能となり、『走る電源車』として応急的に必要な電気機器の稼働や災害現場での電力確保が可能となる。大変心強い」と話した。