先日、電車に乗ろうとホームで待っていた時のこと。後ろに立っていた女性がイヤホンを耳にして電話をしていました。その声が結構大きく響いていて、「耳ざわりやな……」と思いました。(すみません、偉そうに申し訳ありません)
そこでふと思い出したのが30年以上前、私がまだ20代だった時のことです。
当時、担当していた番組で、私は「耳ざわりがいいですね」という表現を使いました。終了後に当時の先輩から「耳ざわりというのは『耳に障(さわ)る』から耳ざわりであって、『心地よい』という意味で使うのは間違いだ」と指摘されました。当時の私は「耳に心地よかった」という意味で使い、何の問題もないと思っていました。
それが今は2つの異なる意味で使われています。
「耳障り(みみざわり)」の本来の意味は……、
「聞いて、不快に感じたり、うるさく思ったりする様子だ。」(新明解国語辞典/三省堂)とあります。ただ、その後に、
「耳触り」として「耳で聞いた時の感じ。」という解説もありました。
NHKの「ことばハンドブック(第2版)」には「このことばは、本来は『耳障りな音』のように、聞いて不愉快に感じたり、うるさく思ったりする場合に使われる。最近では『手触り』『舌触り』などの連想からか、『耳障り』と書いて『耳触りのよい音』『耳触りのいいことば』のように使われる例が増えているが、このような使い方には、まだ抵抗を感じる人が多い。」と、説明しています。
文化庁の広報誌「ぶんかる」の言葉のQ&A(2014年10月30日付け)に、「『耳ざわり』は『障り』か『触り』か」という記事を見つけました。ここには「国語に関する世論調査(平成14/2002年)」の結果として、8割を超える人が「『耳障り』(聞いていて気にさわること)を選んだ」ということが載っていました。少なくともこの調査の時は、多くの人が『耳ざわり』と聞いて、『気にさわる』と捉えていることがわかります。