食事の際、食べ物などが気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)。それが引き起こす誤嚥性肺炎は、お年寄りや脳卒中患者も発症することが多く、人によっては症状が分かりづらい場合もあるといいます。治療や予防方法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――誤嚥性肺炎とは、どのような病気でしょうか?
口に入った食べ物は食道を通過して胃に達する一方、呼吸の際、空気は口と鼻から吸い込まれ、気管を通って肺に入ります。喉の奥でその二つの道は交差していますが、通常であればそれぞれの道をふさぐ蓋があり、食べ物は食道へ、空気は気管へと流れるようになっているのです。ただ、時には飲食物や唾液を飲み込んだ際、気管に入ってしまうことがあります。これが誤嚥です。誤嚥によって食べ物や唾液などに含まれる細菌が肺に入り込んで起こる肺炎を誤嚥性肺炎と言います。
――誤嚥性肺炎は、お年寄りが発症することが多いのですよね。
誤嚥は健康な人でも起こりますが、反射的にむせたり咳をしたりするなどして排出できます。ところが、年を重ねるとともにその反射機能が衰えてくるのです。また、脳卒中や脳梗塞といった脳血管障害や神経系疾患などによっては麻痺が起こり、神経伝達物質が減ることで食べ物を飲み込んだり吐き出したりする機能が低下します。なので、お年寄りはもちろん、脳卒中の患者さんも発症しやすくなります。
――一般的にどのような症状が出るのでしょうか?
やはり発熱が最も多く、他には咳・痰・呼吸困難・胸の痛みなどですね。ただ肺炎の症状で特徴的な高熱はなく、あっても微熱程度。また高齢者の場合、熱はないけれど元気がなくぼんやりしていたり、食欲が落ちて痩せてきたりといった症状で、検査をしてみたら誤嚥性肺炎だったというケースもあります。
――治療はどのように進めるのでしょうか?
まずは細菌の繁殖を抑えるため、抗生物質での治療を行います。脳卒中の患者さんには再発防止のため、脳梗塞後遺症として使用されるアマンタジンや抗血小板作用を持つ脳梗塞予防薬を使用します。これらの薬によって反射機能の改善と脳梗塞の予防、どちらも行えるのがメリットです。ただ、肺炎のきっかけは誤嚥ですので、それ自体を治療するのはなかなか難しいです。嚥下(飲み込み)の練習をしたり、体操をしたりするほか、細菌の繁殖を防ぐために口の中を綺麗にすることも有効とされています。