電話での第一声「もしもし」。かつては当たり前のように使われていましたが、今はそうでもないようです。個人で電話を携帯する時代になり、特定の個人が確実に出てくれると予想されることから、「もしもし」ではなく、「元気?」、「何してる?」など、いきなり本題へと入る人も多くなってきました。
そもそも「もしもし」とはいつの時代から、なぜこのような表現がなされるようになってきたのでしょうか?
電話機を発明した(特許を取った)のはアレクサンダー・グラハム・ベルで、1876年(明治9年)のことでした。2年後、それを使いやすく改良したとされているのが、“発明王”のトーマス・エジソンです。
日本で電話が開通したのは1890年(明治23年)。東京と横浜の間でのことでした。NTT西日本のホームページに掲載されている「電信電話のあゆみ」によると、当時の契約者数は東京で155、横浜で42、加えて電話所(今の公衆電話)数16で、電話交換業務を始めたそうです。ちなみに1893年(明治26年)3月25日には「神戸電話交換局」が開局。「加入申込者数百十六名にして全通七十四名」との記述が残っています。(※1)
しかし、電話開通当初から「もしもし」と言っていたわけではありませんでした。最初は「もうし、もうし」だったそうです。(※2)
『日本語源大辞典』(小学館)によりますと「もしもし」は、「『もうしもうし』の変化した語。相手に呼びかける時にいう語。もうしもうし。また、特に電話を通して相手に呼びかける語」とあります。
『広辞苑 第七版』(岩波書店)で「もうし」を引いてみると、「申すこと。報告。挨拶」などとあり、「もうす」の項目には「(1)『言う』『告げる』の謙譲語。申し上げる。言上する」と記載されています。
一方、『新明解国語 第八版』(三省堂)の「もし」の欄には「呼びかける時に使う語。[やや古風な表現]」とあり、さらに「もしもし」には「『もし』の強調表現。[電話で使うことが多い]」となっています。
そう。かつては声をかける際に「もうしもうし」と言っていたことがあり、それが電話開通後も残り、その後「もしもし」と移り変わっていったようです。(※3)