寒さが一段と厳しさを増し、年の瀬が近づく一方で、「麦の季節」が始まっている。
兵庫県の東播磨地域(明石市・加古川市・高砂市・稲美町・播磨町)は、約400ヘクタール・甲子園球場100個分の広さで大麦を栽培する西日本有数の大麦産地。11月に種まきを終え、現在は発芽した葉がきれいに出そろい、青々とした麦畑が広がっている。これまで、そのほとんどが麦茶に加工されていたという東播磨の大麦だが、近年、JA兵庫南が大麦の持つ特長に着目し、外部機関とも協力しながら新商品の開発にも取り組んでいるという。
「大麦は小麦と似ているものの、成分等はまったく別物。大麦の最大の特長は、食物繊維が非常に多く含まれていること」と話すのは、JA兵庫南の代表理事専務・野村隆幸さん。
大麦の約1割が食物繊維で、その量はごぼうの約2倍、小麦の約4倍、そして白米の約20倍だという。「とりわけ水に溶けやすい水溶性食物繊維が豊富なため、コレステロール値を正常にしたり、食後の血糖値上昇を緩やかにしたりする作用、また内臓脂肪低減、血圧降下や腸内環境を整えるなど、数多くの健康機能があるといわれている」。
今月からJA兵庫南は兵庫大学とともに大麦を毎日食べることによる健康増進効果を調査する試験を開始したほか、大麦のサンプルを使った試作品作りも地域の加工業者等で進行中だ。その1つが、グリッシーニを商品化する兵庫県立農業高校の取り組み。グリッシーニはスティック状のパンで、カリカリとしたクラッカーのような食感を持つ。お菓子のように手軽に食べられるほか、酒のつまみにもよく合うという。大麦で作られているからこそ、低カロリーで健康に配慮できるのもうれしい。
また、JA兵庫南は学校給食でもなじみがある麦ごはんも改良を行っている真っ最中。大麦を米粒の大きさに合わせて2つに割ることにより、白米と混ぜた時にさらに食べやすくした、その名も「米粒麦(べいりゅうばく)」を提供する準備を進めている。
「東播磨の気候風土に最適な大麦を、もっと多くの人に知ってもらいたい。食べておいしく健康にも良い食材ということで、麦みそなど新たな特産品も開発中。一方で、食品以外の商品開発も積極的に行っている」と野村さん。
その一例が、昨年からスタートした大麦の茎で作る「六条大麦ストロー」。天然の大麦だからこそ出せるツヤや風合いも美しい、環境に配慮した一品は直売所「にじいろふぁ~みん」の人気商品だ。大麦の茎の外皮を剥き、ストローの長さにカットする工程は1本1本手作業で行うため、大変な手間暇がかかる。そこで、JA兵庫南が推進する「農福連携プロジェクト」の一環として、障がい者福祉事業所の協力を得て生産を続けている。さらに今年は、大麦を使用したフィンランドの伝統工芸品「ヒンメリ」セットの商品化にも成功、稲美町のふるさと納税品目に申請中だ。
※ラジオ関西『谷五郎の笑って暮らそう』2021年12月14日放送回より
◆JA兵庫南
兵庫県加古川市加古川町寺家町621
電話 079-424-8001
【公式HP】