世界的なブランド「GUCCI」(グッチ)。その創業家の抱える闇が華麗な映像のうちに描かれた今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。
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「GUCCI」といえば、知らない人はいないのでは? という世界有数のブランド。もともと、イタリアのフィレンツェに、創業者の名を冠した“グッチオ・グッチ鞄店”を開業したのがブランドの歴史の始まりだ。その後同族会社として発展を遂げてきたグッチだが、現在の経営陣に、創業家グッチ家の人は誰もいない。
1995年、創業者の孫で3代目社長のマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)が射殺され、1997年に元妻のパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)が、殺し屋を雇って夫を殺させた罪で逮捕された。このスキャンダルは世界中に衝撃を与えた。
有名ブランドのファミリーに、いったい何があったのか?
プロデューサーのジャンニーナ・スコットは、原作本の出版から約20年もの間、映画化の機会を模索し続けてきた。そして満を持して完成させたのが、この『ハウス・オブ・グッチ』だ。
監督を務めたのは、彼女の夫であるリドリー・スコット。イギリス生まれ、サーの称号を持つリドリー・スコットは現在84歳。『エイリアン』(1979年)、『ブレード・ランナー』(1982年)、『ブラック・レイン』(1989年)、『テルマ&ルイーズ』(1991年)、『グラディエーター』(2000年)、『オデッセイ』(2015年)などなど、挙げればキリがないほどの名作の数々を世に送り出している巨匠だ。同じく2022年1月14日に、監督作の『クライ・マッチョ』が公開になったクリント・イーストウッドが91歳。ともにかなりの年齢を重ねながら、ビックリするほどの精力的な活動ぶりだ。
映画史の記録を塗り替える彼らの活躍ぶりを見ていると、人生まだまだこれから! もっともっと頑張らねば…と勇気づけられることしきりなのだが、リドリー・スコット監督は、このコロナ禍に20ヶ月で『最後の決闘裁判』(2021年)と今作を立て続けに手がけたというから、本当にタダモノではないのだ。それどころか、この後も、『エイリアン』シリーズの前日譚や『ジョーカー』(2019年)のホアキン・フェニックスがナポレオンを演じる映画も撮るらしいと聞くと、もう呆れるしかない。本当に忙しいから、今作は短期集中で撮った!…のだそうだ。
『ハウス・オブ・グッチ』
2022年1月14日(金)全国ロードショー
■監督:リドリー・スコット
■脚本:ベッキー・ジョンストン、ロベルト・ベンティベーニャ
■原作:サラ・ゲイ・フォーデン『ハウス・オブ・グッチ 上・下』(実川元子訳、ハヤカワ文庫、2021年12月20日刊行)
■制作:リドリー・スコット、ジャンニーナ・スコット、ケヴィン・J・ウォルシュ、マーク・ハッファム
■出演:レディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエック ほか
■上映時間:159分(2時間39分)
■映倫区分:PG-12
■配給:東宝東和
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【『ハウス・オブ・グッチ』公式サイト】