今年の冬ドラマも中盤に入り、どれも面白くなってきました。なかでも私のおすすめドラマ4つは、奇しくもすべて漫画が原作になっています。
まず、ほかのドラマと一線を画すのが“月9ドラマ”、月曜午後9時の『ミステリと言う勿(なか)れ』(フジテレビ系)。漫画家・田村由美の原作ですが、この主役・久能整を演じるのは、菅田将暉以外に考えられないですね。天然パーマに仏頂面の大学生は、記憶・観察・推測に優れ、警察の捜査をはるかに上回るという才子。淡々と述べる長せりふは、世間の常識を覆す思いがこめられています。
「どうしていじめられている方が逃げなきゃならないんでしょう。欧米の一部ではいじめている方を病んでいると判断するそうです。いじめなきゃならないほど病んでいる。だから隔離して、カウンセンリングを受けさせて、癒すべきだと考える。でも日本は逆です。いじめられている子に逃げ場作って、何とかしようとする。でも逃げると学校にも行けなくなって、損ばかりすることになる。DVもそうだけど、どうして被害者側に逃げさせるんだろう。病んでたり、迷惑だったり、恥ずかしくて問題があるのは加害者の方なのに。『だからあいつにいじめられた』と伝えるのではなく、『あいつ病んでるかもしれないから、カウンセリング受けさせてやってよ』って、みんなが簡単に言えるようになればいいと思う」(以上、『ミステリと言う勿れ』より)
このせりふは、胸にグサリと来ました。また効果的にクラシックの名曲がBGMとして挿入され、凶悪犯役で千原ジュニアをちらっと出すなど演出も憎いです。
金曜ドラマ『妻、小学生になる。』(午後10時~、TBS系)は、村田椰融の漫画が原作。10年前に亡くなった妻が、小学生に生まれ変わって近所に戻ってくるという設定。堤真一(新島圭介)・石田ゆり子(新島貴恵)の夫婦も適役ですが、なんといっても小学生になった妻(白石万理華)を演じる毎田暖乃(のの)の演技が圧巻です。あのNHKの朝ドラ(連続テレビ小説)『おちょやん』で杉咲花(竹井千代)の幼少期を演じて注目を集めましたが、今回は石田ゆり子のせりふ回しや表情を100パーセント再現。完全な大人の役を実年齢10歳で演じ切っているのはお見事。ただ堤真一が亡き妻の友人とホームパーティーをする場面では、みなワインで乾杯するのに、堤だけ“ビール”を飲んでいるのには笑ってしまいました。スポンサーにビール会社が入っているのですが、そういえば石田ゆり子もCMに出ていましたね。
土曜午後10時の『逃亡医F』(日本テレビ系)。こちらも漫画が原作です。恋人殺害の冤罪を着せられ、逃亡しながら真犯人を探す外科医(藤木圭介)の成田凌はまさにハマり役。1960年代に放送されていたデビット・ジャンセン主演の海外ドラマ『逃亡者』を思い出す人も多いでしょう。毎回逃げている間に各地で急患に遭遇し、そこらにある日用品で隠れた場所で緊急手術をしてしまうのは、少し無理はありますが、毎回ハラハラドキドキの連続。恋人の兄(八神拓郎)を演じる松岡昌宏の狂気に満ちた演技がひときわ印象に残りますが、ヒロイン(沢井美香子)・森七菜の存在感が少し薄いのが残念……。
もうひとつは、土曜午後11時40分から放送されている『おいハンサム!!』(東海テレビ・フジテレビ系)。この枠はずっと東海テレビがいろんなジャンルのドラマに挑戦しています。今回は漫画家・伊藤理佐のいくつかの名作をまとめた令和のホームドラマ。主人公・吉田鋼太郎演じる伊藤源太郎は、まさに昭和の頑固おやじの生き残りなんです。男を見る目がない3人の娘にやきもきしながらエールを送りますが、その姿が時に情けなくハンサムというより、なんともチャーミングなのです。ドラマの中での日常の料理へのこだわりも面白く、また妻(伊藤千鶴)役のMEGUMIの何事にも動じない、ひょうひょうした演技も注目です。
続いて、仕掛け人が面白いドラマをふたつ紹介しましょう。
木曜午後9時の『となりのチカラ』(テレビ朝日系)は、人気シリーズ『ドクターX』でおなじみの枠ながら、今回は大きく路線を変えてきました。この脚本を手掛けるのが『家政婦のミタ』や『過保護のカホコ』などのヒット作をもつ遊川和彦。主演の松本潤は『99.9-刑事専門弁護士-』(TBSテレビ系)の時とは打って変わって、優柔不断な“中腰ヒーロー”・中越チカラを演じています。おせっかいで中途半端ながらマンション住民の悩みに首をつっこんでいくという社会派ホームドラマ。しっかり者の妻(中越灯)を演じる上戸彩もハマり役で、主題曲「上を向いて歩こう」を人気ピアニスト・上原ひろみが毎回違ったアレンジで聞かせてくれるのも楽しみのひとつです。