劇作家・演出家の平田オリザさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西)。2022年3月10日放送回では、関西のそば処であり、兵庫県北部の観光名所としても知られる出石町にスポットライトをあてた。
「出石」と聞いて真っ先に「そば」を思い浮かべる人は少なくないだろう。江戸時代中期に出石藩主松平氏と信州上田藩の仙谷氏のお国替えがあり、その際に信州からそば職人を招聘したことに端を発する「出石そば」だが、ここまでの認知になったのはわずか半世紀ほど前からだという。
小皿に小分けした独特のスタイルは、鮮度が重要なそばを、最大限においしく味わうための工夫であり、かつ、白地が美しい地場産業である「出石焼」をPRする手段として生まれたもの。そばのうまさを引き出す「挽きたて・打ちたて・ゆがきたて」の「3たて」にこだわった出石そばを味わえる店は、今では出石で約50件を数え、関西屈指のそば処として知られている。
東京から移住し、豊岡で生活を送る平田さんも「知人には『上品なわんこそば』と紹介しています」と、にっこり。そばにうるさい関東人の舌もうならせるおいしさだと太鼓判を押す。
こうして多くのそば店が軒を連ねているため、出石観光協会では「出石皿そば巡り巾着セット」という商品を発売(税別2000円、税込2100円)。巾着(きんちゃく)に永楽通宝をかたどったコインが3枚入っており、1枚につき3皿、3件のそば店をお得に食べ比べできるというものだ。反応は上々だという。
また、そばには日本酒が合う。創業1708年「楽々鶴」で親しまれる出石酒造の社長で、但馬國出石観光協会の取締役も務める中易裕明さんは「但馬は造り酒屋がもともと多い地域。そばとの相性も良いですし、出石酒造の酒蔵は270年ほど前に作られたものですが、赤い土壁がいろいろな表情をみせてくれます。散策で立ち寄っていただきたいですね」と呼びかける。
出石の魅力はそれだけではない。いま、全国から注目を集めているのは「2番目」という顔だ。昨年、創建150年を迎えた街のシンボルである時計台「辰鼓楼」は明治4年(1871年)、太鼓を鳴らして時を知らせる楼閣として建てられ、その後、明治14年(1881年)に現在の時計台の姿となった。しかし、「日本最古」であることを証明するために郷土資料をひもといたところ、北海道の札幌市時計台に次ぐ「2番目」だったことが判明。今ではそれを逆手に取り、「日本で2番目に古い時計台」としてアピールしている。2022年2月22日には「第1回日本No.2サミット」がオンライン開催され、2番目に高い山の「北岳」(山梨県南アルプス市)・2番目に大きい湖の「霞ヶ浦」(茨城県)とともに、まちの魅力を発信した。
但馬國出石観光協会の中原裕平さんは「(出石の魅力発信という)波紋が着実に広がっている実感があります。出石はお祭りも多い地域で、本来ならそば食い大会や盆踊り、秋の大名行列で盛り上がります。イベントも徐々に復活していきたいですね」と前を向く。
※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp